INTERVIEW

牛田智大『ショパン:バラード 第1番、24の前奏曲』 ショパン本来の姿が表現されている

Photo:Ariga Terasawa

 

「《24の前奏曲》にはショパン本来の姿が表現されている」

 2018年の浜松国際ピアノコンクールにおいて第2位、併せてワルシャワ市長賞、聴衆賞を受賞した牛田智大が、10代最後のアルバムとしてリリースしたのはショパンの《バラード第1番》と《24の前奏曲》。そのショパンの作品に対し、ことばを尽くして語る。

 「今シーズンに取り組んだ《24の前奏曲》は、24のまったく異なる世界が描かれ、多彩な技巧と音楽性が求められます。僕はこれをひとつのまとまった作品、大きなドラマと考えています。壮大な作品ですし、録音のときは〈ひとつの波〉が動くような感覚で演奏しました。ショパンの人生を映し出していますし、他の作品とは異なり、ショパンの素の部分、内省的で人間的で本来の姿が表現されていると思っています」

牛田智大 ショパン:バラード 第1番、24の前奏曲 UCJ Japan(2019)

 牛田智大はこの作品の楽譜を深く読み込み、ショパンの魂に肉薄していった。

 「ショパンのあらゆる面が投影された作品で、ひとつひとつの作品はそのときの感情を断片的に切り取っているような感覚で、練習すればするほど深い内面性に魅せられていく。ショパンは作曲当時、さまざまな問題を抱えていました。体調もあまりよくありませんでしたし……。弾きながら僕も病んでいくような思いにとらわれ、ノイローゼになりそうでした。それほどショパンの人間性が色濃く表れています。ショパンの二面性も感じられ、この作品を学んだことでショパンの難しさをより感じるようになりましたし、さらに新たな面も発見することができました。ショパンは作品に自己の感情を強く反映させる作曲家ではなく、どちらかというとポーカーフェースというか内面の表現に一定の距離を置いている作品が多いのですが、《24の前奏曲》は本来の人間の姿が描写されています」

 この大曲に何の作品を組み合わせてアルバムを作るかを熟慮し、《バラード第1番》に決めた。

 「《バラード第1番》は物語性が強く、レチタティーヴォのような作品です。ことばを伴い、それに音楽がついていく感じで、ショパンらしくない面が多く感じられます。ですから、《24の前奏曲》の序曲のように最初に演奏するのに適していると思ったのです。バラードはイントネーションがとても大切。音符と音符のほんの少しの間、揺れが重要になります。僕はいずれバラードは全4曲を演奏したいと思っています。それぞれ異なる曲想を備えていますし、高い芸術性を弾き手に求める作品だと思うからです。第1番は、情熱的で若々しさを感じますね。ショパンらしくないと思う面は、頭脳より感情が前面に出ている点です」

 最近、夏はワルシャワでポーランドの先生に師事し、ショパンの心により近づくよう研鑽を積んでいる。

 

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