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これはずっと続けたい

――OMSBさんが7年空いたのもありますけど、二人とも今回のが3枚目ですね。

OMSB「めちゃくちゃ空きました。VaVaちゃんはスピード感がえげつないから」

VaVa「打率がバカ低いんでとりあえずめっちゃ投げてるんですけど。逆にこれまででいちばん時間かかった曲って何ですか?」

OMSB「曲でいうと『ALONE』の曲かな。“LASTBBOYOMSB”とかは凄く気に入ってるビートで最初のテイクを録ったけど、ハマりが悪くて歌詞もフロウも変えたし、ビートも変えたりしたから……3年ぐらいかかって。“OMSBから君へ”も短期間でいろいろ迷走したけど。どちらも大事にしたかったから大変でしたね」

――アルバムを作るたびに楽曲に対するハードルが上がってきている?

OMSB「途中まではその感じがありました。一回制作の間が空いて、その間にEPとか作ってる頃からはあんまりそういうプレッシャーを感じなくなりましたね。書いてると出てくるもんなんだなってわかったから」

VaVa「僕は『VVORLD』は全然苦労してないですけど、『VVARP』はマジでこねくり回しました。ただ、いろんな人と曲をやったので、いろんなアイデアを貰えるという意味ではずっとフレッシュなまま作業を終えられた感じはあります。まあ、すぐできる曲のほうが言いたいことがはっきりしてるぶん、単純にいい曲になるっすね」

OMSB「それあるよね。長いヴァースでもノッてるときは案外すぐに書き終わってるし、気持ち良くなってる時のほうがいい曲が出来る感じがする」

――VaVaさんは外部の人に委ねたトラックも多いですね。

VaVa「作るのは好きなんでビートは感覚でずっと作れちゃうけど、自分のイメージとか世界観だけで全曲やると似たような曲が多くなって薄まると思ったので、他の人のヴァイブスをいただきましょうって感じでした。相手を選んで連絡してる時点で自分のフィルターがすでにかかってるなって思うので、ラッパーとしての新たな自分みたいなものを他の人に引き出してもらう感覚で挑戦しようっていう気持ちでしたね」

――OMSBさんは『ALONE』というテーマ的に、意図して一人の度合いを高めた作品ですよね。

OMSB「何度もブレそうになりましたけど、今回は客演ナシで〈自分を見てもらえるアルバム〉を作ろうっていう前提がありました。制約があるとタフなものが出来たりするんだなって思ったけど、流石に一人で作り続けるのも寂しくなってきたし(笑)、かっこいい人に自分を引き出してもらうのもアリかなって思って、いろいろ声をかけさせてもらってます」

――昨年も“Triforce”や“Wheels”がありましたけど、ツーマンを経たお二人のコラボにもまた期待したいです。

VaVa「そうですね。〈BOYS II MEN〉ツアーも経験してみて、東京以外の場所に泊まりでライヴに行くのとか、大人だけどずっと遠足みたいな感じでワクワクするっすね。もともとクラブとか好きじゃなかったけど楽しいって思うし、これはずっと続けたいです。パーティーしたいっす(笑)」

OMSB「普通にクラブは行く場所だったけど、コロナを経てもっと〈クラブ行きてぇな〉みたいな感覚が強くなった気がする」

VaVa「ありがたみを感じるようになりましたね」

――ありがたみという意味では、今回のアナログ化もそうですよね。何でも聴ける状況だからこそ物体に意味が出てくるというか。

VaVa「レコードになるってヤバいっす。冷静に考えてジャケをこの大きさで見ないじゃないですか。改めて形になるのってめっちゃ嬉しいですよ」

OMSB「めちゃくちゃ嬉しい。前からずっと出したかったし、ファーストからちょうど10年で3枚とも出るのは感慨深いです」

VaVa「やっぱ特別っすよね、レコードとかCD。CDは盤を外してトレーの裏を見るのが好きなんですよ」

OMSB「あそこ大喜利だからね(笑)。帰りの電車で読むライナーノーツとかめちゃくちゃ有意義な時間だった」

VaVa「そう、電車の中で開けて、聴けないけどブックレット見てスゲーってなる、あの感じが好きだから、自分の音楽を好きな人たちにはその楽しみを知ってもらいたいな。この特別感」

――はい。そんなLPもありつつ、お二人とももう今回のアルバム以降の次の段階に進まれている現状なんでしょうか。

VaVa「僕は〈いちばん好きな自分の曲は?〉って聞かれたら、〈世に出てない新曲〉っていうマインドなので、それを更新していけたらいいなと思ってます。いまは単純に楽しみながら曲を作ってる感じです」

OMSB「VaVaちゃんみたいに〈新曲がいちばん好きな曲〉とは言えないけど、いまは単純に大好きな曲を作れてます。流石にもう7年も空けるとかしたくないんで」

――VaVaさんの4枚目が先に出るかもしれない。

OMSB「普通にそれは全然あると思います(笑)。でも、この感じを絶やしたくないからいろいろやってるし、もうアイデアは浮かびはじめてますね」

このたびCD化され、12月3日にアナログ盤もリリースされるOMSBのニュー・アルバム『ALONE』(SUMMIT)

このたびCD化され、12月3日にアナログ盤もリリースされるVaVaのニュー・アルバム『VVARP』(SUMMIT)

OMSBが参加した近作を一部紹介。
左から、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの2022年作『プラネットフォークス』(キューン)、KMCの2022年作『ILL KID』(PERFECT STORM)、PUNPEEとVaVaとOMSBが手掛けた2021年のサントラ『ODDTAXI』(ポニーキャニオン)

『VVARP』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、tofubeatsの2022年作『REFLECTION』(unBORDE)、VIGORMANの2019年作『SOLIPSISM』(VIGORMAN)

VaVaの参加作品。
左から、藤原さくらの2020年作『SUPERMARKET』(スピードスター)、木村カエラの2020年作『ZIG ZAG』(Colourful)