結成25周年を迎えたアジカンが待望の10作目で歌うものとは――混迷の時代とハードな現実に瀕して、それでも音楽的な進化を伴って繋がりを信じた『プラネットフォークス』の本質に迫る!
共生への願い
結成25周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)が記念すべき10枚目のフル・アルバム『プラネットフォークス』を完成させた。2003年にファースト・アルバム『君繋ファイブエム』を発表したアジカンは、ウィーザーやオアシスといった欧米のバンドのポップなソングライティングと、NUMBER GIRLやeastern youthといった日本のオルタナティヴなロックの影響を消化し、代表曲“リライト”を収録したセカンド『ソルファ』でチャートの1位を獲得。2016年に再録盤もリリースされた同作は、00年代以降のこの国のロックの新たな教科書となったと言っても決して大げさではないはず。その一方、地元・横浜を舞台に〈NANO-MUGEN FESTIVAL〉を主催し、日本のアクトと海外のアクトを並べることで、双方のファンの交流を促してきたことも特筆すべきだ。
2010年の6作目『マジックディスク』以降は、ストリングスやホーン・セクションを導入したり、後藤正文(ヴォーカル/ギター)以外のメンバーも作曲を担当したり、曲ごとにゲストを招いたりと、徐々に音楽性を拡張。後藤のソロ活動開始を経て、2015年の8作目『Wonder Future』ではLAにあるフー・ファイターズのプライヴェート・スタジオでレコーディングを行い、サブスクが普及して、海外のチャートをラッパーが牛耳る時代におけるロック・バンドの音像を再定義すると、2018年の『ホームタウン』ではパワー・ポップに回帰し、リヴァース・クオモをはじめとする数多くのアーティストとのコライトを行った。
こうして(本当にざっくりとだが)振り返ってみると、アジカンはこれまで常に作品や活動を通じて音楽シーンへの問題提起を行いながら、分断を生むさまざまな壁を打ち崩そうとトライし、ミュージシャンとリスナーを、またミュージシャン同士、リスナー同士を繋げ続け、繋がり続けてきたと言えるだろう。〈集団〉を意味する〈フォークス〉をタイトルに掲げた新作は、分断の脅威と共生への願いがせめぎ合う時代において、もう一度〈フォークス〉として繋がり直そうとする姿勢を示した、実に感動的な作品だ。