OMSB『MONKEY』正解は無いなんて不正解――主体性の塊のような音楽が模索し定義する〈正解〉

2021.05.24

日本のヒップホップ・シーンを代表するラッパー/プロデューサーのOMSBの新作EP『MONKEY』が、所属するレーベルSUMMITからリリースされた。

2015年のアルバム『Think Good』以来、OMSBにとっての久しぶりのまとまった作品ではあるが、NORIKIYO、TWINKLE+VaVaDJ KRUSH、BIG-RE-MAN、GEZANといった幅広いメンツとの共演やトラックの提供など、リリースはこの数年途切れることなく続いていた。とりわけSUMMIT名義で2017年にリリースされた“Theme Song”2019年作の大阪のラッパー/プロデューサーFULLMATICとの”Lunatic Old Ghost”が最高なので未聴の方は是非この機会に。

そして2019年には客演ではなく自身の新曲として“波の歌”もリリースしている。直近の活動としてはテレ東系深夜アニメ「オッドタクシー」の音楽をPUNPEE、VaVaらとともに手がけ、こちらも話題を呼んでいる。

新作『MONKEY』は全4曲と、あくまで〈EP〉のサイズだが、物足りなさは皆無だ。”Childish Wu””Airwalk”などに顕著な、ごくシンプルで、音程の上下する幅が狭いベースは、ベースライン(線)ではなく〈面〉として存在する低音、壁のように立ち上がる強烈な低域としてこちらの脳とカラダを揺らしつつ、楽曲全体に不思議な浮遊感・軽みをもたらしている。4曲というコンパクトさの中に漂うこの浮遊感を掴み取るべく、繰り返し聴く内に、約11分の濃厚な音の流れが現れる。

また、MVも公開された“Naruhodo”は〈奪い合いより与え合いが良い/でもダサい奴には躊躇い〉〈汗水垂らすmoney tax/お返しはマスク2枚〉など強烈なパンチラインが頻出するリード曲だが(露悪的なユーモア・センスはOMSBの作品を語る上で避けられないポイントだが、『MONKEY』でのリリックは、かつてなくストレートで屈折のない表現が発せられている印象だ)、とりわけ印象的なのが〈正解は無いなんて不正解〉というリリック。この一節が、家族、人生、そしてヒップホップについての思いを生々しく歌うラストの”Airwalk”の〈焦りmake money/よりスカッとする晴れ舞台/俺の叫びで観衆ぶっとんでスマイル/それだけで勝ち ライム望みを馳せる価値/Stakes is high どこにも敵はいない/i just 笑い合いたい/根拠はないけどこれが正解みたいだ〉へと繋がっていく〈正解〉を巡る展開は、本作のピークのひとつだろう。

正解は誰にもわからない、絶対に〈正しい〉ものなんて存在しない……という言説を選ぶことなく、自問自答を繰り返し、現時点での己にとっての〈正解〉を、暫定的にでも常に定義し続ける立場を引き受けること、その果敢な誠実さ。ECDは生前「僕にとってはパンクもヒップホップも『で、お前はどうすんの?』って主体性を問うてくるものだった」と語った。OMSBの作り出す主体性の塊のような音楽は、真正面からこちらを見据え、その瞳の中に映るこちらの姿を、否応なく突き付けてくる。そんな作品は、少なくとも筆者にとっては、そう多くは存在しない。

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年5月7日
品番:SMMT-145
フォーマット:ストリーミング/ダウンロード
配信リンク:https://summit.lnk.to/SMMT145

TRACKLIST
1. Childish Wu (Produced by Rascal)
2. Naruhodo (Produced by OMSB)
3. BoMaYe!!! (Produced by OMSB)
4. Airwalk (Produced by Madkosmos, Opus Inn)

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