79年にトムは、セルフタイトルドアルバム『Tom Verlaine(醒めた炎)』でソロデビューを果たした。その後は、『Dreamtime(夢時間)』(81年)、『Words From The Front』(82年)、『Cover』(84年)、『Flash Light』(87年)、『The Wonder』(90年)、『Warm And Cool』(92年)とコンスタントにアルバムを発表し、94年にはインディー映画「Love And A .45」のスコアを担当している。そして、2006年にスリル・ジョッキーから『Songs And Other Things』と『Around』の2作を発表したものの、以降は寡作になっていた。
一方、テレヴィジョンは、92年に一度再結成を果たし、サードアルバム『Television』を発表。93年まで活動を続けている。2001年には再々結成して活動を続け、2007年にロイドが脱退してリップが加入。新作を制作しているという噂もあったが、結局発表されないままだった。
近年では、2010年にソロで来日公演を行い、テレヴィジョンとしても2013年以降にたびたび来日。ベテラン、ヴァイオレント・ファムズの2019年のアルバム『Hotel Last Resort』に参加したことも話題になった。
トムはテレヴィジョンの時代から商業的な成功に恵まれることはなかったが、その音楽の後世への影響は極めて強い。レック率いる日本のバンド、フリクションがそのバンド名をテレヴィジョンの楽曲から取っていることや、デヴィッド・ボウイがトムの“Kingdom Come”をカバーしていること、サーストン・ムーアと彼のソニック・ユースなど後進のNYのバンドからリスペクトされていることなど、トムとテレヴィジョンがさまざまな形で及ぼした影響の大きさは計り知れない。
そういえば、オールウェイズ(Alvvays)のニューアルバム『Blue Rev』(2022年)には、“Tom Verlaine”なんて曲が収められていた。
ギタープレイと音色の独創性(テレヴィジョンではロイドとのギターアンサンブル)、象徴派から影響を受けた独自の詩世界、奇妙に引きつった歌声――トムのきわめてユニークな、だが徹底してロックンロールだった音楽がもう聴けないのは、ひじょうに残念だ。今日は遺されたレコードを聴いて、彼のことを思おう。