このアルバムでコシミハルは、シューベルトの歌曲をテクノポップとして再生し、このアイデアをマトリックスに越美晴本人と細野晴臣が書き下ろした新曲を加えて制作された。当時、この作品をはじめとして高橋悠治と矢野顕子もクラシックと高橋の歌曲を原曲通りに取り上げたアルバム“BROOCH”や、クラウス・ノミのアリアのテクノ化など、昨今のポスト・クラシカルの前景化とも言える情況が始まっていた。タイトルの“ボーイ・ソプラノ”は変声前の男子が一時的に持つ特殊な歌声のこと。カウンターテナーとはその意が異なる。コシミハルは男子に宿る束の間の美声をコスチューム化して纏い、本作ではローラン・プティのように舞う。