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新録されたコラボレーション

 まず、Disc-1には『Painted From Memory』が2023年リマスターで丸ごと収録。もちろん最大の注目は『Taken From Life』と題されたDisc-2で、ここでは両名のコラボ成果が未発表音源や新録曲も含めてコンパイルされている。先述の『Look Now』収録曲やフリゼールの『The Sweetest Punch』からも数曲がピックされ、さらにコステロ&インポスターズのEP『Purse』(2019年)で出た共作曲“Everyone’s Playing House”の収録も嬉しい。未発表にあたるのは『Painted From Memory』のミュージカル・スコアを想定して作られていた音源だそうで、オードラ・メイとジェニー・マルダーの歌唱が楽しめる。

 そして何より、バカラックが逝去したことも踏まえればなおさら貴重になるのが3つの新録曲なのは言うまでもない。冒頭に置かれた“You Can Have Her”と“Look Up Again”はヴィンス・メンドーサ編曲によるバカラック&コステロの共作曲で、いずれも2021年9月にハリウッドのキャピトル・スタジオにてバカラック指揮でレコーディングされたものだという。もう1つの共作曲はコステロ&インポスターズの演奏による“Taken From Life”で、こちらはセバスチャン・クリスのプロデュースで2022年に録音されている。そんな『Taken From Life』のラストを飾るのは、これまた未発表音源の“Lie Back & Think Of England”。バカラックの歌とピアノによる幕切れが何とも言えない聴後感を残してくれる。

 言うまでもなくここ数年のコステロは、昨年初頭にリリースしたインポスターズとの『The Boy Named If』が全英6位のヒットを記録し(グラミーにもノミネート)、最初に組んだバンド=ラスティの復活作を発表するなど、自由なペースで絶好調ぶりを継続しているところだ。今回の記念リリースを経て、バカラックという大きな存在はまた彼の新たなインスピレーションになっていくことだろう。

左から、エルヴィス・コステロ&ザ・インポスターズの2018年作『Look Now』(Concord)、エルヴィス・コステロ&ザ・インポスターズの2022年作『The Boy Named If』、ラスティの2022年作『The Resurrection Of Rust』(共にEMI)

左から、エルヴィス・コステロ&ビル・フリゼールの95年のライヴ盤『Deep Dead Blue: Live』(Nonesuch)、オードラ・メイの2010年作『The Happiest Lamb』(Side One Dummy)、ジェニー・マルダーの2010年作『Dearest Darlin’』(Continental Blue Heaven/BSMF)