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中毒性の高い〈コカ・コーラ マシッタ〉

そして、あいかわらず抑制的で、少々艶めかしい5人のボーカルパフォーマンスが見事で、ため息が出る(コーラス終わりの吐息もすごい)。このようなアップテンポの複雑な曲でも抑えた発声で歌いこなしてしまえるのも、NewJeansの大きな魅力だ。

〈コカ・コーラ マシッタ(코카콜라 맛있다=コカ・コーラ おいしい)〉と、コーラスで商品名を繰り返し歌い込んだ歌詞の思い切りのよさにも驚かされる。韓国文化や韓国語に通じる多くのBunniesがすでに調査して指摘しているとおり、一度聞いたら忘れられないこの中毒性の高いフレーズは、日本で言うところの〈どれにしようかな 天の神様の言うとおり〉に似た定番の童謡、わらべうたなのだとか宇多田ヒカルのCMソング“Kiss & Cry”における〈今日は日清CUP NOODLE〉の直接的なリリックをふと思い出した)。

 

マルチバース青春群像劇(?)なMV

もちろん、毎回ユニークな試みでファンを夢中にさせ、翻弄するミュージックビデオは、今回も見どころ十分である。

“Zero”ミュージックビデオ

MVは、部屋で絵を描くヘリンのシーンから始まり、海辺の写真にいいねをするダニエル(セーラー風のニットがいい!)、CONTAX G1で彼女を撮るヘインがバスに揺られているパートが続く。そして、ヘリンが描いた〈海辺に現れた赤いドア〉を現実世界で見たハニは、海辺の写真を家に飾っているミンジのもとに駆け込んでいき、彼女を外へと連れ出す。ヘリン以外の4人はバス停で出会い、〈海辺に現れた赤いドア〉という図を共通点にドアがある砂浜に赴き、コカ・コーラゼロをリュックに詰め込んだヘリンが赤いドアを通って現れる、という筋書きになっている。

邂逅した5人のはしゃぎぶりも、実にかわいらしい。最後、夕暮れになると5人は花火で遊んで、打ち上げ花火に歓声を上げている。

異なる世界で暮らしていたヘリン、ダニエルとヘイン、ハニとミンジの3組が一つのイメージを通じて合流するのはなんともSF的で、流行のマルチバースっぽくもある。それぞれのパートが分かれている語り口は、群像劇映画のファンとしてはロバート・アルトマンクエンティン・タランティーノやポール・トーマス・アンダーソンの初期作品を思い出すところ。

 

不思議の世界に連れて行ってくれるうさぎ

とにかく、繰り返しになるが、NewJeansの表現には毎回驚かされている。〈SUMMER SONIC 2023〉での来日公演も控えているなか、今後さらにどんなサウンドと歌、ビジュアル表現を繰り出してくるのか、期待で胸がいっぱいである。

走るうさぎを追いかけていったら、まだまだこれからも新しい、不思議と驚きが詰まった世界を見ることができそうだ。

 


RELEASE INFORMATION

NewJeans 『Zero』 ADOR(2023)

リリース日:2023年4月3日
配信リンク:https://ingrv.es/Zero

TRACKLIST
1. Zero