今年は彼女たちに何度驚かされるのだろう
今年は彼女たちに何度驚かされるのだろう、と思った。
昨日4月3日の18:00、NewJeansと〈Coke Studio〉(コカ・コーラが2022年に始動させたグローバルな音楽プラットフォーム)とのコラボレーションソング“Zero”がリリースされた。コカ・コーラのグローバルアンバサダーに抜擢されたNewJeansによる、コカ・コーラゼロの爽やかさを表現したCMソング、という位置づけである。
ドラムンベースのビートを取り入れたプロダクション
NewJeansの曲は、まずはやはりそのプロダクション、サウンドに毎回驚かされる体験が強烈だ。
“Attention”でのデビューとファーストEP『New Jeans』(2022年)の時点では、私にとっては〈コンセプチュアルで高品質、洗練された中毒性の高いK-Pop〉という印象にまだ留まっていたが、昨年末の“Ditto”と年始の“OMG”、そして今回の“Zero”で、完全に別格のグループになった。これほどフレッシュで驚きに満ちた曲(とビジュアル表現、見事に構築された世界)が立て続けに届けられると、なんだか前人未到の記録を次々に打ち立てていく超人的なアスリートやスポーツチームを見ているような気分になる。
さて。“Zero”の中心になっているのは、“Ditto”にも少々取り入れられていた細かい刻みのブレイクビートだ。あきらかにジャングル/ドラムンベースのビートで、ドラムとベースがバウンシーだった“Ditto”と“OMG”に比べるとかなりテンポが速く、BPMは172ほど。
この軽やかで親密な(重くない)ドラムンベースで、しかも2分34秒しかない(!)という短さから連想されるのは、イギリスのシンガーソングライター、ピンクパンサレス(PinkPantheress)の曲である。“Break It Off”や“Passion”(いずれも2021年)などと、ぜひ聴き比べてみてほしい。ちなみに、彼女と米ブロンクスのラッパー、アイス・スパイスによるボルチモアクラブ風のショートチューン“Boy’s A Liar Pt. 2”は現在大ヒット中だ。
“Zero”の話に戻ろう。細かい部分に耳をそばだててみると、イントロでフィールドレコーディングされたような鳥の声などが聴こえ、それがなんとも言えないアンビエンスをもたらしている。そして、そこに重なる、コロコロと転がるような電子音のフレーズが、微妙にグリッチしているのが絶妙だ。その後、リフレインとコーラス(サビ)には、うねるサブベースが覆い被さってくる。プリコーラスでは音数を抑え込んだ引き算が効いているが、〈コ・コ・コ・コ〉とミンジの声が細かく刻まれ変調された強烈なパートを経てコーラスに入ると一転、ボイスサンプルや破裂音のような打音が加えられ、アップリフティングなムードになる。
プロデュースと作曲は、モンロー(Monro)というUKのプロデューサー/作曲家。あまり情報のない作家だが、マセーゴやジェネイ・アイコといったR&Bアーティストたちの曲を手がけているようだ。作曲者はもう一人、NewJeansの多くの曲に参加してきたスウェーデンの作家イルヴァ・ディンバーグ(Ylva Dimberg)がクレジットされている。歌詞はそのディンバーグとGigiことキム・ヒョンジ(김현지)という常連の布陣で、陣頭指揮を執るミン・ヒジンのチームといった感じだ。