活動開始から6年半。カメレオン・ライム・ウーピーパイがついにファーストアルバムをリリースする。タイトルは『Orange』(彼らはジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンをフェイバリットに挙げるが、94年作とタイトルが同じになったのはたまたまらしい)。2019年リリースのファーストシングル“Dear Idiot”から新曲まで全17曲を収録した『Orange』では、オリジナリティを獲得したカメレオン・ライム・ウーピーパイの音楽的功績と、ネガティブをエネルギーに変換し続けるフロントパーソン・Chi-の人間的歩みを見ることができる。

〈カメレオン・ライム・ウーピーパイの音を日本のスタンダードに加える〉ということを目標に、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、ビースティ・ボーイズなど90年代ポップミュージックへの愛情と、その時々に3人がかっこいいと感じるものを混ぜ合わせて、ジャストなタイミングで楽曲を発表してきた。だからこそこれまではシングルやEPという形でリリースが続いたのだが、こうしてベスト盤のごとく楽曲を並べられると、カメレオン・ライム・ウーピーパイの音楽にはChi-の生き様こそが色濃く昇華されていることがわかる。それを言葉にするのであれば、〈どうせ死ぬんだから好きに生きよう〉といったマインドや、〈こんなやつがいてもいいじゃん〉と世間でマイノリティとされてしまうものへの支持と可能性の提示だ。

今ギリギリのところを歩いている人へ、カメレオン・ライム・ウーピーパイの音楽やChi-の存在は類稀なジョイを与えてくれる。『Orange』完成を機に、絶望や怒りをバネにして生きるChi-の思想について深く対話をさせてもらった。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ 『Orange』 CLWP(2023)

 

人生の最後に音楽をやろう

――ファーストシングル“Dear Idiot”から最新曲までを並べて聴いてみて、Chi-さんとしてはどんなことを思いますか。

「そのときに自分たちが一番いいと思っているジャンルやテンションから作っているので、曲ごとにコロコロ変わってはいるんですけど、カメレオン・ライム・ウーピーパイの軸や〈私たちっぽさ〉みたいなものを感じることができました。それは意識してやっているわけではなく、自然と出ているものだと思うんですけど。たとえば、かっこつけてやらないとか、こだわらないとか、ダサい部分があったりするとか。〈ダサくてかっこいい〉みたいなところがカメレオン・ライム・ウーピーパイっぽさなのかなって、なんとなくは思っています」

『Orange』トレーラー

――カメレオン・ライム・ウーピーパイには〈振り切れた人のかっこよさ〉みたいなものがありますよね。その強さが作品ごとに濃くなっているのではと、『Orange』を聴いて思いました。そもそも2016年にWhoopies 1号・2号と出会う前、Chi-さんはどんなことを音楽で表現していたんですか。

「音楽を始めて2回目のライブでWhoopiesと出会ったので、私が一人で音楽をやっていた期間ってものすごく短いんです。でも本当、今と考えていることは同じで。ネガティブが一周回ってポジティブに変わるところ、というか。ネガティブなスタート地点から〈ちょっとやってみよう〉みたいな。当時はもうちょっと暗い感じだったんですけど、今とあまり変わらないですね」

――“Mushroom Beats”で歌っている〈くだらない日々に/逆らって踊って期待して死ぬだけGirl〉こそ、Chi-さんが変わらず思い続けていることだとも言えますか。

「そうですね。本当に、この一文が私のすべてを表しているというか。多分、一生この気持ちで生きていくんだろうなと思っています。“Mushroom Beats”は結構、私の人生を表している曲だなと思いますね」

『Orange』収録曲“Mushroom Beats”

――踏み込んで聞かせてもらうと、Chi-さんのどういう人生を表した曲だと思うのでしょう。

「音楽を始める前はネガティブな環境にいて、そこから抜け出すタイミングで〈人生の最後に音楽をやろう〉という感じで始めたんです。

ずっと世の中に対して絶望しているんですけど、でもちょっと期待しているから音楽を始めたりするんですよね。生きているということは、若干期待しているということ。そこが自分っぽいなと思います」

――何か変わるかもしれないし変えられるかもしれない、と誰しもが僅かに期待を抱くけど、Chi-さんの場合は突き抜けているふうに見えるというか。