ボックス・セットが教えてくれるデジタルとは別のたのしみ方

VARIOUS ARTISTS 『ガブリエル・ピエルネ作品集』 Warner Classics(2023)

VARIOUS ARTISTS 『プロコフィエフ・コレクターズ・エディション』 Warner Classics(2023)

 ガブリエル・ピエルネ(1863-1937)とセルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)のボックス・セットが届いた。ほかにもアニバーサリー・イヤーの作曲家はいるものの、Pのイニシャルの2人がならんだ。前者は10枚で3cm、後者は36枚で8cmくらい。と、近年のボックスは紙で厚さが薄いのもありがたい。

 CDに依存して音楽を聴くのは時代遅れだと自覚しつつも、ボックスでまとまっていると、一作曲家の全体像が、完全にではなくとも、モノとしてとらえられるような気がする。レコード会社がかつてリリースした音源をまとめて、というのはよくわかっている。だから大事なものが抜けていたりもする。それでも、だ。メジャーな作曲家であるなら、おなじ楽曲でもいくつもの演奏がある。ボックスを編集するにあたり、担当者は取捨選択をする。独断で進めることもあるかもしれないし、何人かであーだこーだとやりとりして決めていくかもしれない。いずれにしろ、ひとつのボックスは、同一レーベルで〈これで!〉という意志が反映されたものと(とりあえずは)みえる。楽曲も同様だ。収録したいものがある。でも、録音はない。そんなことも多々あろう。ならばどのように謳おうか。

 あまり好きじゃないもの、必要じゃないものもボックスにははいっている。じつは、そこが大事だ。かつては全然興味がなかった、好きじゃなかったものを、たまたま耳にしたりもするし、へえ、こんなのがとおもうものもある。反対に、アレがない!とがっかりしたりもしばしば。ピエルネのボックスはオペラははいっていないし、高名なオラトリオ“少年十字軍”がないのは痛い。でも、個人的にはクリスマス時期にかならず聴く“ベツレヘムの子供たち”があるから、良し、と。プロコフィエフでは、3番のピアノ協奏曲をアルゲリッチ、ワイセンベルク、作曲家じしんのソロで聴きくらべできるし、“ピーターと狼”の語りが、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、日本語(坂本九!)も、また。36枚目には、短いけれど、プロコフィエフが遺したピアノロール演奏やインタビュー、また、歌っているものもある。

 ネットにあるものとはべつのたのしみがボックスにはある。たとえ自己満足であったとしても。