現代音楽を取り扱うレーベルでも最高峰に位置するECM。現在も活発な活動を続ける同レーベルから、今月も際立って素晴らしい音源が3つ同時にリリースされる事となった。一つ目は『メレディス・モンク:Piano Songs』。いわゆる“声”の作家として名高いモンクだが、今回はピアノでの勝負。声、パフォーマンスをほぼ使用しないという、モンクとしてはこれまた稀な内容だが、寧ろ彼女のファンこそ聴いてほしいCD。これまでの作品に用いられてきた有機的な音の絡みを、全てスケルトンにして展示したような仕上がりだからだ。言うならばモンクの“骨格展示”。コレを聴かずしてモンクを語る事無かれ。

BRUCE BRUBAKER,URSULA OPPENS Meredith Monk:Piano Songs ECM New Series(2014)

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 2つ目はECMによって聴衆に受け入れられたと言っても過言ではないマンスーリアン、久々の新譜。今回は作者75歳を記念した、室内楽に特化した作品集。様々な奏法を駆使する氏の音楽でも最も繊細な室内楽に挑んだのは、若手ヴァイオリニスト急先鋒の1人、コパチンスカヤ。これまで近代を中心に圧倒的な技巧を見せつけてきた彼女が遂に現代を弾くという事でも十分おすすめできるが、その出来がとにかく素晴らしいのだ。奏法の使い分けはもちろんの事、強弱から表情付に至るまで完璧に表現しきる技術に脱帽する事然り。白眉は《4つの厳粛な歌》。ゆるやかな流れから一転、強いアタックが現れる所では独壇場を形成していく様が殊の外見事。プロコフィエフが聴ける人ならぜひ一聴のほどを。

 トリはこれまたECMの顔『バートウィッスル:室内楽作品集』。室内楽といっても、声が入ったり、即興的なジャズを思わせる「トリオ」があったりと、こちらは現代音楽を地で進む安定の音作りが魅力。人気ヴァイオリニストのバディアシュヴィリが参加している。常に高いクオリティで聴衆を楽しませてくれるECMならではの3タイトルではないかと。