(左から)長門芳郎、クリス松村

『RIDE ON TIME』(80年)、『FOR YOU』(82年)を筆頭に、山下達郎が76~82年にRCA/AIRでリリースした名盤の数々が、新たなリマスターとカッティングのアナログ盤およびカセットテープで順次リイシューされている。

話題の企画〈TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection〉にあわせてタワーレコード渋谷店で開催されたのが、〈CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA〉だ。2023年5月に催されるやいなや好評を博し、6月にアンコール開催されたことも記憶に新しい。さらに、7月12日(水)からは、〈CITY POP UP STORE @ TOWER RECORDS UMEDA NU CHAYAMACHI〉として大阪の梅田NU茶屋町店でも開催されることが発表された。

同ポップアップストアでは、クリス松村と長門芳郎のトークイベントが5月13日に行われた。山下達郎の音楽に造詣の深いクリス松村と、シュガー・ベイブでのデビュー以前から山下達郎を知るパイドパイパーハウスの店主・長門芳郎の対話は、(時系列が少々混乱し脱線をしながらも)貴重なエピソードが満載。Mikikiは、充実のトークの模様を4回に分けてお届けする。


 

観客が4人しかいなかった300円のライブ

クリス松村「私も何日か前、この会場に来させていただきましたが、すごいですよね。(今回再発される8作品の中で)最新アルバムの『FOR YOU』でも82年ですから、41年前ですよ。それまでのアルバムがこういう風な形になって」

長門芳郎「まさかね、こんな風になるとは」

山下達郎 『FOR YOU(完全生産限定盤)』 ARIOLA JAPAN(2023)

クリス「長門さんは以前、中野の近くにお住まいだったんですよね。中野ブロードウェイを歩きながら〈山下くんの声が街中で流れたら、どんなにいいだろう〉と思っていらっしゃったと。〈山下くん〉なんて言えるのは長門さんぐらいですよ」

長門「沼袋近くの3畳一間の一軒家に帰る時に……」

クリス「随分詳しい情報!」

会場「(笑)」

長門「以前、山下くんが(中野)サンプラザでのコンサートでそのことを話していましたね。

そこは銭湯裏のバラック小屋で、そこに山下くんやター坊が年末や正月に差し入れを持ってきてくれていたんです」

クリス「優しい! みなさん、〈ター坊〉と言って〈誰ですか?〉って質問する人はここにいますか?」

会場「(笑)」

クリス「大貫妙子さんですね。今、色んな年代の方がいて、達郎さんのコンサートにも若い方が多いですから、〈わかっている〉と思って話していても通じないことがありますし。

で、達郎さんたちが色々持ってきてくれていたと」

長門「山下くんの実家がパン屋さんだったのでパンとかお菓子とか、ター坊はお米とかの食料を持ってきてくれて」

クリス「達郎さんはパンの配達とかもおやりになっていたから、運転がお得意なんですよ。私、達郎さんが運転しているのは一度も見たことがないんですけど。

この間もNHKラジオで達郎さんに〈機関銃トーク〉なんて言われちゃいましたけど(笑)。そこで〈“愛を描いて(-LET’S KISS THE SUN-)”の歌詞からは情景が浮かぶ〉という話をしましたが、達郎さんが運転している画は浮かばない(笑)。

そういえば、シュガー・ベイブって75年4月にデビューしていて、去年私がお話をさせていただいた時に〈『ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY』から50周年ですよね〉と言ったのですが、実は50年前の73年、シュガー・ベイブは長門さんの故郷の長崎の音楽祭に出ているんですよね」

長門「僕が仲間たちとやっていた〈大震祭〉ですね」

クリス「あれは、プロとして出たと思ってよろしいですか?」

長門「いや、まだアマチュアですよ」

クリス「12月には青山タワーホールでコンサートをやっているじゃないですか」

長門「レコードデビュー前はとにかく仕事がなくて、ステージ経験を積むために大学祭に出たり、ライブハウスのオーディションを受けたりしていました。

渋谷のジアン・ジアンは、最初は昼の部しか出させてもらえず、ある程度お客さんが入るようになってきたら夜の部に出られたんです。初めて昼の部に出た時は、お客さんが4人ぐらいでした」

クリス「よく達郎さんもラジオでおっしゃってますが、本当に4人ですか?」

長門「そう。その内の1人が、音楽評論家の高橋健太郎くん。73年9月に文京公会堂で、はっぴいえんどの解散コンサートがあったじゃないですか。その時にシュガー・ベイブがコーラスで出ていて、それを見たらしいんですよね。で、渋谷を歩いていたら、〈シュガー・ベイブ、300円〉と書かれた看板を見つけた。当時、300円だったんですよ!」

クリス「そのぐらいですよね。80年代に入っても、エッグマンのライブはまだ1,000円ぐらいでしたもの」

長門「青山タワーホールでのコンサートも600円でしたから」

クリス「今、ここにいらっしゃる方は〈どうしてその時代に戻れないの?〉と思っていますよ」

会場「(笑)」

クリス「話を戻しますが、長崎までの車を運転したのも達郎さんなんですよね?」

長門「山下くんとター坊と僕とで、交代でね。神戸から下関まではフェリーなんですけど、運転に慣れている山下くんがほとんど運転してくれましたね」