グラミー賞に加え、マッカーサー賞、ピューリッツァー賞も受賞したアメリカーナ界の才媛が初めてオリジナル曲だけで完成させたサード・アルバム。彼女自身は本作をただ一言〈アメリカン・ミュージック〉と位置付けているが、これまでのフォークから一転、ぐっと前に出てきたソウルフルな印象があまりにも鮮烈だ。プロデューサーはR&B界隈の仕事が多いジャック・スプラッシュ。そこに溶け込んだフォーク、ブルース、ジャズ、ケイジャン、ゴスペルの要素が味わい深いコクを醸し出す。控え目に言っても傑作。“Yet To Be”ではジェイソン・イズベルと情熱的なデュエットを繰り広げている。

 


初聴したタイトル曲の、キャロル・キングや初期シェリル・クロウを彷彿とさせる、想定外のポップさに驚かされたが、アルバムを通して聴くと、これまで同様ブルース、ジャズ、フォークなど様々なアメリカン・ルーツ・ミュージックがリアノンの音楽の中にある。本作ではそれらが有機的に結びつきあいポップ・ミュージックという大河へと発展。彼女の歴史という積み重なった時間の重みを感じさせる歌声の効果も相まって音楽の奥深さや複雑さに今更ながら圧倒された。そんなリアノン・ギデンス初の全曲オリジナルとなるソロ3作目。常々発見する楽しみの尽きない一生の愛聴盤に出会いたいと思ってるが彼女の作品がまさにそう。