ニューオーリンズから届いたクレオールなアコースティック・ミュージック

 クレオールといえばカリブ海の複合文化を思い浮かべる人が多いかもしれないが、アメリカでも創世記のジャズはクレオール文化そのものだった。たとえばニューオーリンズ・ジャズの創始者の一人キング・オリヴァーはクレオール・ジャズ・バンドを率いていた。そのキング・オリヴァーから著作権をめぐって訴えられたデューク・エリントンの曲は《クレオール・ラヴ・コール》……。アメリカで最も芳醇なクレオール性を帯びたそんな都市ニューオーリンズを拠点にレイラ・マッカラは活動を続けている。

 ニューヨークに生まれ、チェロを学び、モス・デフのコンサートのライヴ・サポートなどを体験した後、2010年、ニューオーリンズにやって来た彼女はあたかも里帰りしたような既視感をおぼえた。両親がニューオーリンズとはカリブ海つながりのハイチ出身だったから、自分が育ってきた文化と通じるものの多さを感じとったのだ。

LEYLA McCALLA Day For The Hunter, A Day For The Prey JAZZ VILLAGE(2016)

 このセカンド・アルバムでも、クラシック、ジャズ、スピリチュアル、カントリー、ケイジャンザディコフォークシャンソン、ハイチ音楽などの要素を品よく組み合わせ、クレオール性豊かなアコースティック・ミュージックを演奏している。楽器はバンジョーやギターやチェロ(リズム・ギターのようにも使う)を弾く。英語、フランス語、クレオール語でうたう歌声には、カリビアン・フレンチ的なまろやかさがある。

 レイラがサポート・メンバーをつとめたアメリカーナの人気グループ、キャロライナ・チョコレート・ドロップスリアノン・ギデンスは、ソロでは20世紀アメリカのポピュラー音楽の伝統に連なるアルバムで注目を集めた。そのリアノンやギタリストのマーク・リボーもゲスト参加したこのアルバムは地理的にも時間的にも20世紀のアメリカ音楽に収まらない広がりを持っている。ニューオーリンズの路上で演奏しながらルイジアナ音楽の古層にふれてきた彼女の伸びざかりの柔和な想像力に乾杯したい。