NewJeansが〈SUMMER SONIC 2023〉での初ステージを終えた。出演したのはフェス東京公演の初日(2023年8月19日)正午からの40分間、入場規制のかかったMARINE STAGE(ZOZOマリンスタジアム)を熱狂させたのはもちろん、日本やアジアにおけるNewJeansの地位を決定づけたパフォーマンスだった。
配信では捉えていない部分を伝えるなら、彼女達の前にスロットされたSUMMIT All Starsが終了した直後から、会場は一気にNewJeansのモードへ。
一目見ようと湯水のごとくスタジアムに流れ込んでくるオーディエンス、ベストポジションでそのステージを目撃するため、すでに準備万端なBunnies(NewJeansファンの総称)が1つになっていく光景は壮観だった。それとともに、サマソニで昼間の、しかもスロットの早い段階でスタジアムが埋め尽くされていくことはかなり異例と言っていい。
今回、NewJeansは〈Lollapalooza Chicago〉(2023年8月3日に出演)の時と同様、ライブ前半はバンドセットでのステージを披露した。スタート前のサウンドチェックで“OMG”“Ditto”などがプレイされるたび、会場ではコール&レスポンスとシンガロングが巻き起こる。
今年のサマソニは、本能的に危険を感じるほど暑い。猛暑に加え、早々とチケットがソールドアウトしたことにおける人口密度の高さ、さらに場所や時間帯にもよるが全く風が吹き込んでこないこと。NewJeansの5人もこまめに水分補給していたが、そうした環境下で素晴らしいパフォーマンスを届けていた事実も書き残しておきたい。
秀逸なトラックやジャージークラブをはじめとする意外性のある参照元、それらに僅かなスパイスを加えて新たな視点を盛り込むことに長けたミン・ヒジン率いるプロデュースチームの手腕など、NewJeansを紐解く切り口は様々だ。
そうした他のK-Popグループ/アーティストにはない魅力は、確かにサマソニのステージからも十二分に感じられた。だが、多くが画面越しに見てきたであろうNewJeansの姿を肉眼で捉えて思ったのは、ミンジ、ハニ、ヘイン、ダニエル、ヘリンの身体能力の高さ、そして時代の先頭を走る者だけに備わるオーラを5人が確かに持ち合わせていた、ということだ。
バンドセットで挑んだライブ前半、“Ditto”や“OMG”では中毒性の高いダンスを披露。生楽器によるリズム&ビートは多少なりとも揺らぎが生まれるぶん、統率を取るフォーメーションありきの振り付けには少々不向きなイメージがある。だが、〈Lollapalooza Chicago〉の映像でも確認できるとおり、実際のステージではそうした不安材料を微塵も感じさせない。表には出さない、日々のたゆまぬ努力がそこには透けて見える。
たゆまぬ努力と言えば、MCを全て日本語でこなしていたことにも驚いた。多忙を極めるNewJeansの5人だが、国境を越えての意思疎通において言語=コミュニケーションが最も重要であることを忘れてはいない。多少の突っ掛かりもご愛嬌、ナチュラルなイントネーションのMCを介して彼女達を好きになった人もいるはずだ。
しばしのクールダウンを挟んでのライブ後半は、ダンサーも参加した2nd EP『Get Up』のパートへ。“New Jeans”から“ASAP”までEP収録の6曲を曲順どおりに披露していく。
エアロビクス風のダンスも特徴的な“Super Shy”では、会場のいたるところで同様の振りを踊る人達が。“Attention”や“OMG”など、NewJeans特有の大きなアクションながら魅力的に見える振り付けは、誰もが一度は真似してみたくなるものだ。
iPhone 14 ProのCMにて日本でも浸透している“ETA”では、ファヴェーラファンク特有の陽気さを孕んだトラックに合わせ、ジャージークラブの要素をキュートに昇華させたダンスに目を奪われる。炎天下のスタジアムに〈What’s your ETA?〉のコールが響き渡るシーンを見て、彼女達の存在がここ日本でも浸透していることを再確認できた。
どうしてもコアな部分にばかりフォーカスされがちだが、NewJeansがK-Pop第4世代の新鋭としてデビューしたことを忘れてはいけない。K-Popアイドルとして、今まさに新しいドアを開け放ったばかりの5人の勢いは、まだしばらくは衰えそうにない。
SETLIST
1. Ditto
2. OMG
3. Cookie
4. Attention
5. Hype Boy
6. New Jeans
7. Super Shy
8. ETA
9. Cool With You
10. Get Up
11. ASAP