三浦大知“能動”が垣間見せる新境地――新作『OVER』を予見させる、〈優しく尖った〉驚異的な新曲を聴く

〈DAICHI MIURA LIVE TOUR 2023 OVER〉をスタートさせたばかりの三浦大知が、アルバム『OVER』を2024年1月24日（水）にリリースする。コンセプト作『球体』（2018年）から6年ぶり、『HIT』（2017年）から7年ぶりになるオリジナルアルバムだ。2022年もNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の主題歌“燦燦”、「第73回NHK紅白歌合戦」への出場、〈第64回輝く!日本レコード大賞〉で最優秀歌唱賞を受賞と大活躍だったが、『OVER』はひさしぶりのアルバムということで待望の作品だと言える。そんな新作から先行配信され、すでに話題を呼んでいる“能動”の音楽的挑戦や先鋭性について、ライターのimdkmに掘り下げてもらった。＊Mikiki編集部

Pop

ラテンフレイバーを感じさせる驚異的な曲

2024年1月、およそ5年半ぶりとなるニューアルバム『OVER』をリリースすることを発表した三浦大知。2018年の『球体』以来、アルバムのリリースこそなかったが、エンターテインメント性と尖ったアティチュードを両立させたシングルをコンスタントに放って存在感を示してきた。そんな彼が全曲新曲のアルバムを用意しているというだけでも期待が高まる。

そのニューアルバムからのリードシングルとなるのがこの“能動”だ。サウンドプロデュースには日韓のアーティストを中心に世界を舞台に精力的に活動を行ってきたTOMOKO IDAを迎えている。2分40秒の短さのなかに豊かなアイデアに満ちたサウンドと三浦大知の持ち味であるボーカルの表現力を詰め込んだ驚異的な楽曲だ。

“能動”

じり、じり、とグリッチーなノイズで幕を開けるイントロからして、ビートはこちらに襲いかかってくるかのようにノイジーでアグレッシブ。特徴的なリズムとあわせて、アルカやロザリアといったラテンポップのカッティングエッジを彷彿とさせる。実際2分10秒あたりの三浦大知のフェイクはどこかラテンのフレイバーを感じさせる（そして、無音を挟んでシャウトから楽曲が動き出すダイナミックな展開も素晴らしい）し、TOMOKO IDAはプエルトリコのレゲトン／ラテントラップのプロデューサー、タイニーのアルバム『DATA』（2023年）に参加したことも記憶にあたらしい。

優しくも尖った新たな一面

しかし、そうしたアグレッシブなサウンドに埋もれることなく、ラップ調の歌唱を含む多彩なニュアンスのボーカルとコーラスを通じて、楽曲に華やかでしなやかなポップさを付け加える三浦大知の存在感があいも変わらず素晴らしい。彼がSOULHEADのTSUGUMIと共同で作詞した歌詞には〈可能性ありすぎてOverload〉〈丸いまま鋭く尖ろう〉という印象的なフレーズが出てくるが、まさしくこの曲そのものがあふれる可能性と、優しくも鋭く尖ったアティチュードを体現していると言えよう。

単に先鋭的であるばかりではなく、三浦大知の新たな一面を垣間見せる“能動”。聴けば聴くほどに、来るニューアルバムでは新境地に達しているのではないかという予感を覚えざるをえない。