五十嵐夢羽さん、宇野友恵さん、横山実郁さんの3⼈による新体制で活動を続けているRYUTist。今秋にはニューシングルのリリースを予定しているのだとか。そんなRYUTistの友恵さんが、お気に入りの本について綴っている連載がこの〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉です。今回は、前回お届けした、映画「ドキュメント サニーデイ・サービス」と書籍「青春狂走曲」をきっかけにした東京への旅の記録の後編。 *Mikiki編集部
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〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉第26回目、〈青春狂走旅〉
の後半をお届けします!
BGM “東京”
2日目の朝。私は千鳥ヶ淵にいました。
桜が印象的なアルバム『東京』のジャケットを撮影した千鳥ヶ淵を聖地巡礼。
デザインを担当した小田島等さんによると、植物の写真集に載っているソメイヨシノの写真を「カラーコピーすることによって色が飛んでほとんど白になったのでコピックという半透明のペンで彩色したんです。」とのこと。(「青春狂走曲」より)
きちんと写真家さんにも出版社にも許可を取ってできたジャケットなんだそうです。
映画「ドキュメント サニーデイ・サービス」の劇中では、桜の散る川のようなところでボートに乗る曽我部恵一さんの姿がありました。
なんとなく『東京』のジャケットの場所と同じじゃないか?と予想して、千鳥ヶ淵ボート場にたどり着いたのでした。
ジリジリと太陽が照りつける猛暑の東京でボートを漕ぎ、同じ場所を探すのでした。
季節的にはもちろん桜はありません。葉が緑になった木の枝の角度や生え方から撮影場所を分析するという本気なのか不真面目なのかわからないゆるい状況です。
安部さん(旅に同行してくださったRYUTistのスタッフ)と、「これ、きたんじゃないか?」などと夢中になって写真を撮り、満足して本物の映像と見比べていると、ある重大なことに気づきました。
曽我部さんが乗っていたのは赤。私たちが乗っているのは青。
違ったのです。ボートの色が。
咄嗟にボート乗り場の方を振り返って確認しますが、並んでいるボートは青ばかり。
確信に近いところまできていた渾身の一枚は完全にグレー。
すっかり忘れていた暑さが一気に脳を支配しはじめたところで30分のボートタイムは終了。
なんとも言えない旅の終わり。
それでも、今回の旅は全部を含めて最高だったと言い切れる2日間でした。
(後日手に入れた公式パンフレットを読んでみたら、別カットがあり、やっぱり違う場所だった模様です。でもこの真実を知らなかったから本気になれました。大切な思い出が残りました。)
BGM “セツナ”
時間を巻き戻して、1日目の夜、下北沢から渋谷へ移動した私たちは、今回の旅の一番の目的であった映画「ドキュメント サニーデイ・サービス」の2回目を観るため、渋谷シネクイントさんへ向かいました。
「青春狂走曲」を読んでから観た「ドキュメント サニーデイ・サービス」は、今のサニーデイ・サービスさんを中心におきながら、これまでの歴史はかなりぎゅっと凝縮されているように感じました。
本を読んだからこそ、その省略された部分も本をザァッとめくるように、出来事が溢れるように浮かんできました。
監督のカンパニー松尾さんが2時間半に収めるのが大変だったとおっしゃっていたことにも納得でした。
30年の間の変化ひとつひとつにいろんな背景があることが感じとれました。
丸山晴茂さんを追悼するライブで曽我部さんと田中さんが2人で演奏されていた“セツナ”のシーンで号泣。
1回目に観た時は断片的に追っただけの私もあの場面は泣いていたけど、様々なエピソードを知ってから観た2回目は演奏から丸山さんの気配がして、より沁みてくるものがありました。
(上映前は会場の特別展示も堪能。曽我部さんが表紙の「クイック・ジャパン」も後日ゲットしました。)