近年のジョン・ケイルやモーリッツ・フォン・オズワルド・トリオらとの邂逅が作用したのか、あるいは映画のサントラ制作の経験がそうさせたのか、かつてのハイパーダブからの諸作やDJミックス作品で鳴らしていたようなキレのあるビートはこの5年ぶりのアルバムからは聴こえてこない。アンビエントともドローンとも形容し得ない魅惑的なサウンド・コラージュで全編が埋め尽くされ、なかでも中盤に登場する“Belleville”で奏でられる鍵盤の音色は官能的ですらある。みずから新たなレーベルを立ち上げ、音楽家としてさらなる高みをめざして踏み出した一歩に圧倒されることだろう。