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Photo by 太田好治

今回のセットリストに新たに加わったインスト曲“HALF MOON”では、布袋が叙情あふれるギターを披露した。続いて、バンドによる“ROMANTICA”のインスト演奏が入る構成。後半は“PROPAGANDA”IMAGINE HEROES”など、たたみかける展開となった。“GOOD SAVAGE”でも吉川と布袋の白熱のギターバトルが実現。“恋をとめないで”の印象的なギターリフが鳴り響いた瞬間に、会場内の温度が上がったかのようだった。5万人によるシンガロングは壮観だ。吉川が歌詞の一部を変えて、「東京ドームの夜だぜ」と歌うと、待っていましたといわんばかりの大歓声と拍手。本編の最後は“MAJESTIC BABY”だ。「お前と一緒なら」というフレーズでは、コール&レスポンスが起こり、「お前と一緒にエールを!」と吉川がシャウトすると、賛同の意を表明する雄叫びが起こった。エンディングでは、吉川がシンバルキックを披露。何度か失敗した後に、鮮やかに決めると、布袋が両手を挙げてガッツポーズ。

アンコール1曲目には“1990”が演奏された。LEDモニターに〈1990〉の数字が映し出されての始まり。COMPLEXが活動していた1989年から1990年にかけてはベルリンの壁崩壊、天安門事件、東西ドイツ統一など、世界的に激動の時代だった。彼らは当時の世界情勢を踏まえて楽曲を制作していた。平和への祈りは2024年の今も有効だろう。2024年の“1990”は〈愛と勇気と希望の歌〉と形容したくなった。ヒューマンな歌声とギターが真っ直ぐ届いてきたからだ。観客も「ラララ」で参加して、温かな空間が出現し、曲の終わりには〈2024〉の数字が映し出された。“RAMBLING MAN”でのファイティングスピリッツあふれる演奏からは、彼らが今も挑み続けていることが伝わってきた。アンコール時のMCでは、布袋のこんな発言もあった。「あの頃20代だった吉川は58歳、オレは62歳だぜ。でも年を重ねても、心はどこまでも走れるんだぜってことをみんなに伝えられたんじゃないかと思います」

Wアンコールではセットリストに新たに加わった“CLOCKWORK RUNNERS”が演奏された。時計の刻むリズムに導かれて、ダイナミックなバンドサウンドが展開されていく。タイトなカッティングからストレンジなテイストのリフまで、布袋のギタープレイは変幻自在だ。吉川の歌声は困難な時代を生きるすべての人へのエールのようにも響いてきた。最後の曲は“AFTER THE RAIN”。ここで歌われている〈雨上がりの街〉とは希望の象徴でもあるだろう。観客がスマホのライトを灯して揺らす光景は、まるで夜空にまたたく星の輝きのようだった。

Photo by 山本倫子

アンコールも含めて、24曲、2時間半。会場内には濃密な一体感が漂っていた。〈日本一心〉を掲げた公演でもあり、〈一体感〉ではなく〈一心感〉と表現したくなった。感情や意志までもが一つになっていると感じたからだ。この東京ドーム公演では、吉川と布袋だけが〈融合〉したのではないだろう。二人とバンドとスタッフと観客の思いを結集する2日間になったのではないだろうか。

2日目の終演後に吉川からこんな言葉もあった。

「みなさんに賛同していただいたものは、適切に使っていただけるところをしっかり確かめて、我々が届けにまいりますので、安心してください。ちょっと時間はかかりますが、しっかりやります」

〈日本一心〉の旗のもとに集結した人々のエールの思いは、さまざまな形となって被災地に届くことになるだろう。

 


■COMPLEX
Vo. 吉川晃司 Gt. 布袋寅泰  

■BACK BAND]
Per. スティーヴ エトウ Dr. 湊雅史 Ba. 井上富雄 Key. 奥野真哉 MP. 岸利至

SETLIST
1. BE MY BABY 
2. PRETTY DOLL 
3. CRASH COMPLEXION 
4. NO MORE LIES 
5. 路地裏のVENUS 
6. LOVE CHARADE 
7. 2人のAnother Twilight 
8. MODERN VISION 
9. そんな君はほしくない 
10. BLUE 
11. Can't Stop The Silence 
12. CRY FOR LOVE 
13. DRAGON CRIME
14. HALF MOON
15. ROMANTICA
16. PROPAGANDA 
17. IMAGINE HEROES 
18. GOOD SAVAGE 
19. 恋をとめないで 
20. MAJESTIC BABY

ENCORE
21. 1990
22. RAMBLING MAN

W-ENCORE       
23. CLOCK WORK RUNNERS 
24. AFTER THE RAIN

 


PROFILE: COMPLEX
1988年12月10日、突如として結成が発表され、たった2年弱という短い活動期間ながら今なお語り継がれる、吉川晃司と布袋寅泰による伝説のユニット。絶大な人気を集めたが、1990年の暮れに東京ドームで行なわれたライブ〈COMPLEX 19901108〉を最後に無期限活動停止を宣言。その21年後の2011年、東日本大震災復興チャリティーライブ〈日本一心〉を開催した。

1988年12月10日    吉川晃司と布袋寅泰によるロックユニット結成。
1989年4月8日    シングル“BE MY BABY”で衝撃的デビュー。
1989年4月26日    アルバム『COMPLEX』
1989年5月10日~ ツアー『COMPLEX Tour 1989〉(全国44公演)
1990年3月14日    シングル“1990”
1990年4月18日    アルバム『ROMANTIC 1990』
1990年5月9日~    ツアー〈COMPLEX ROMANTIC 1990〉(全国33公演)
全ての作品でオリコンチャート1位を獲得。
1990年11月8日    東京ドーム公演を最後に活動を停止する。
2011年7月30日31日 東日本大震災の復興支援を目的としたチャリティーライブを東京ドームで開催。

吉川晃司オフィシャルサイト:https://kikkawa.com/
布袋寅泰オフィシャルサイト:https://jp.hotei.com/