ONE OK ROCKが再び世界を巡る旅に出る――2024年9月の東京・味の素スタジアム公演を皮切りに、バンド史上過去最大規模のワールドツアー〈ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR〉を開催する。

さらには7月12日(金)より公開となる映画「キングダム 大将軍の帰還」の主題歌として新曲“Delusion:All”を提供。公開日と同日に配信シングルとしてリリースされることも発表され、ワールドツアーの開催とともにファンを大いに歓喜させた。

そんな新たな旅路を前にしたONE OK ROCKをバックアップするため、Mikikiでは彼らがこれまで発表してきたオリジナルアルバム10作をレビューした。

Taka(ボーカル)、Toru(ギター)、Ryota(ベース)、Tomoya(ドラムス)はONE OK ROCKをどのように前進させてきたのか。ライターの高橋美穂、荒金良介、蜂須賀ちなみにも参加してもらった以下10作のレビューを読んで、彼らの壮大な道のりを改めて確認してみてほしい。 *Mikiki編集部


 

『ゼイタクビョウ』(2007年)

ONE OK ROCK 『ゼイタクビョウ』 Aer-born(2007)

メロディだけではなくリズムのセンスにも長けたソングライティング。“内秘心書”“努努-ゆめゆめ-”といった曲名にも見える、Taka独自の言葉遣い。なにより、『ゼイタクビョウ』というアルバムタイトルに顕著なメッセージ性と、それを堂々と届けるTakaの歌唱力。小さなライブハウスで頭角を現したばかりの存在感が、音楽以外の話題でかき消されそうな瞬間もあった。しかし今思えば1stアルバムの頃から、その実力と独自性は萌芽していた。洋楽と邦楽の垣根なくラウドロックバンドに対する憧れを語っていた、10代の澄んだ瞳を思い出す、鋭利なほどキラキラした音色が今作には詰まっている。 *高橋

 

『BEAM OF LIGHT』(2008年)

ONE OK ROCK 『BEAM OF LIGHT』 Aer-born(2008)

1stアルバム発表後、わずか半年のスパンで出た2ndアルバム。全8曲と収録曲は決して多くないが、バラエティに富む曲調を揃え、作品トータルで飽きさせない仕上がりだ。オープニング曲“必然メーカー”はバンドサウンドにアコギを効果的に絡めたロックナンバー。それから全編英語詞で挑んだ“100%(hundred percent)”は熱きロック魂を突きつける高揚感に溢れ、アルバム中盤に挟まれたインスト曲“Abduction-interlude”は一服の清涼剤として機能。そして、後半にかけても疾走感溢れる“燦さん星”やスラップベースを用いた“Crazy Botch”と、ライブの画が浮かぶエネルギッシュな楽曲がずらりと並んでいる。 *荒金

 

『感情エフェクト』(2008年)

ONE OK ROCK 『感情エフェクト』 Aer-born(2008)

収録曲にも”20 years old”とあるように、20歳前後だったメンバーの当時の心情と感情が鮮明に刻まれたアルバムだ。前2作からの勢いを殺すことなく、むしろさらなる上昇気流を掴もうとする気迫がサウンドや演奏からビシビシと伝わってくる。爽快なギターリフで開始1秒からフルスロットルで駆け出す”恋ノアイボウ心ノクピド”、心の内をさらけ出したロックアンセム”Living Dolls”など、のちに実現する数万人とのシンガロングを想定したかのような楽曲は聴く者を鼓舞する。他人任せではなく追い風すら自分達で生み出す――今作で表現された彼らのスピリットは、今も変わらずに4人の中に宿っているはずだ。 *小田

 

『Nicheシンドローム』(2010年)

ONE OK ROCK 『Nicheシンドローム』 A-Sketch(2010)

“完全感覚Dreamer”“Wherever you are”などの代表曲を収録した4thアルバム。海外のバンドの影響下にあるエモメタル/ハードロックサウンドと、邦楽的なドラマティックさを有したメロディの掛け算からなる楽曲群は多くのリスナーに受け入れられた。リリース前年の2009年には、メンバー脱退&望まぬ形での活動休止に見舞われたONE OK ROCK。音楽で苦境を乗り越えるどころか、ブレイクポイントを生み出すに至った当時のバンドのエネルギーがパッケージされている。歌詞では社会の型にはまり、個を埋没させたくはないという感覚、怒り、反骨精神を扱いつつ、自分が葛藤しているならば〈君だって〉〈誰だって〉という視点で人を広く受け入れようという姿勢も。 *蜂須賀

 

『残響リファレンス』 (2011年)

ONE OK ROCK 『残響リファレンス』 A-Sketch(2011)

転換点にしてブレイクスルーになった前作の先へバンドが進んだことを証明し刻みつけた5作目。背景には前年に初の武道館ワンマンライブを成功させた経験があり、当時のインタビューでは「直球でズバズバいくだけじゃなくて、たとえ座った状態で聴いても伝わる曲も作っていきたいなと思った」「武道館の経験を通じて必要だと思ったスケール感の強化が、曲作りのテーマとしてありました」と語っている。その言葉どおりプロダクションもアレンジも練り込まれ複雑化しており、“Pierce”のようなアコースティックバラードから劇的にビートを展開させる“Mr.現代Speaker”まで聴き手を退屈させる瞬間は皆無。一方、チャントから始まるアンセム“アンサイズニア”では重さと速さを同居させた独自のグルーヴを生み、“NO SCARED”では緩急をつけつつ駆ける。冒頭4曲はすさまじい疾走感と重量感だ。さらに“Re:make”や聴き手のハートを直接焚きつける“キミシダイ列車”など重要曲が多く、どこまでもエモーショナルな快作である。彼らがなぜリスナーを勇気づけるのか、心を熱くさせるのか、その答えがこのアルバムにはある。 *天野