リッチー・ブラックモア派、エイドリアン・ブリュー推し
――一方で、クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジの3大ギタリストではレッド・ツェッペリンの“Good Times Bad Times”しか入っていません。
「たしかに」
――クリーム(エリック・クラプトン)などはお気に召さない?
「僕はクラプトンよりは断然リッチー(・ブラックモア)派なんですね」
――ディープ・パープルは入っていますか?
「入ってるよ、“Hush”が」
――ああ。初期ですね。
「その点はもうしわけないんだけど、“Hush”はジョン・ロードがオルガンを(パーカッションみたいに)叩くイントロがいいんだよね」
――レインボーも“Stargazer”を選曲されていますからリッチー派というのはおっしゃるとおりですね。
「レインボー、何年か前に復活したよね。リッチーはずっと奥さんのキャンディス・ナイトとケルト音楽みたいなことをずっとやっていたんだけど、その姿があれを思い出すんですよ――」
――ロバート・フリップですか。
「そう(笑)。YouTubeにあがっているトーヤ(・ウィルコックス)とのパフォーマンスを思い出すよね」
――そういえば、キング・クリムゾンは“Elephant Talk”でしたね。
「それについては、僕はエイドリアン・ブリューが客演している作品が好きなの。ブリューがメインのはそうでもないんだけど、トーキング・ヘッズの“Once In A Lifetime”も入れましたけど、トーキング・ヘッズとかローリー・アンダーソンとか客演しているのは全部好き(笑)」
――クリムゾンでまさかのブリュー推しとは、プログレファンに怒られますよ。あとつけくわえるなら、ハードロックかわからないですが、シン・リジィが気になりました。
「シン・リジィ大好きです。いいですよね」
――シン・リジィは大人になると味わい深くなってくるバンドかもしれないですね。
「僕も若いころから知っていたけど、好きになったのは比較的最近ですもん。R&Bのニュアンスもあるし、時代によってはニューウェーブっぽくなったりもして、ハードロックだけでは語れない。ゲイリー・ムーアが脱退したとき、ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロが代役をつとめたことがあるんだよね。ベースがボーカルなのもかっこいいし。アイルランド最初の国民的ロックスターでU2より断然早いからね。
ヴァンパイア・ウィークエンドが“ヤツらは町へ(The Boys Are Back In Town)”をカバーしていたし、プライマル・スクリームのボビー(・ギレスピー)がいったはじめてのライブがシン・リジィなの」
シンセポップとアンビエントの狭間で
――Corneliusの新作『Ethereal Essence』になぞらえると、リストにはアンビエント的な要素がある楽曲も多いですね。ただ全体的な傾向としては狭義の環境音楽というよりも、シンセポップやニューウェーブのサウンドテクスチャーと地続きな印象があります。選曲にさいして意識されたことありますか。
「結果、そうなったという感じですかね。80年代のものが多いのは、思春期に聴いていたものが記憶に定着している度合いがつよくて、選曲をしようとするとパッと出てくるんでしょうね。
たとえばシンセポップだと、フラ・リッポ・リッピというバンドがいます。ノルウェーのバンドでジョイ・ディヴィジョンのフォロワーみたいな感じで出てきたんですけど、途中からエレポップ、シンセポップ路線になって、当時ヨーロッパでもまあまあヒットしていたんじゃないかな。それを聴き直して、どれもいいと思って。ほんとうにいま、日本では誰も聴いていなさそうだけど、向こうではすごく人気があったんですよね。
日本でもZABADAKが彼らの『Songs』(1986年)に入っている“Shouldn’t Have To Be Like That”という曲を“水のソルティレージュ”としてカバーしています。ZABADAKは、僕はなぜかデイト・オブ・バースと混同しがちなんだけど、そういうバンドや作品を忘れてはならないというのと、ティアーズ・フォー・フィアーズがいまめちゃくちゃ人気あることを知りました。Spotifyの再生数でもかなり上位にいるんですよ」
――ティアーズ・フォー・フィアーズは“Everybody Wants To Rule The World”を選ばれています。
「この曲なんかマジで再生回数10億超えですよ。いまそれを若い人たちも聴いている。当時もふつうにチャートのべスト10とか、ビルボードにも入っていましたよね」
――当時の記憶だとこの曲と――。
「“Shout”だよね。こっちのほうが日本では車のCMにつかわれていたから印象が強いかもね。舘ひろしさんの出ていた車のCM曲が“Shout”だったの。
彼らは最初、ダークウェーブというか、ファーストはすごく暗い感じだったんだけど、セカンドの『Songs From The Big Chair(邦題=シャウト)』にはロバート・ワイアットに捧げた“I Believe”なんかもあるし、アメリカでヒットしましたよね。あと彼らはニューウェーブの時代のミュージシャンとしては楽器もめちゃくちゃ巧かったんですね。当時アメリカで売れたUKニューウェーブのバンドって意外と少ないんですよね。ニュー・オーダーとかもアメリカではあんまり。
彼らはいまでも活動していて、かなりビッグなバンドになっているみたい。僕もなんだかんだでずっと聴いてます」
――舘ひろしもいま「あぶない刑事」でリバイバル中ですね。
「舘ひろしさんといえばブライアン・フェリー(笑)。ちなみにブライアン・フェリーは入っています」
――“Let’s Stick Together”ですね。ブライアン・フェリー関連ではロキシー・ミュージックの“Avalon”もとりあげていますね。イーノも『Taking Tiger Mountain (By Strategy)』(1974年)の“Third Uncle”があがっています。
――イーノはほかにもアンビエントの名盤『Cluster & Eno』(1977年)の1曲目を選ばれています。
「イーノはソロ以外でも、誰かと組んでいる作品を入れだすとけっこういけるからね」
――デヴィッド・バーンとイーノとのアルバムの曲も入っていますね。
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