2023年3月にリリースしたシングル“amaranthus”で注目を浴びた新鋭、北村蕗。歌の魅力と現代的なトラックメイクを融合したハイブリッドなスタイルを見事にプレゼンしたこの曲のインパクトはとても大きかった。長らく地元である山形を中心に音楽活動を行ってきた北村は、このリリースと前後して東京へ拠点を移すことに。すると、あれよあれよというまにフジロックに出演を果たし、それ以後もシングルの発表やライブ出演をかさね、注目は高まり続けている。冨田ラボが手がけた2024年1月から放送されたドラマ「地球の歩き方」の劇伴にコーラスとして抜擢されたのも記憶に新しい。
そんな北村の最新作であり初のEPである『500mm』は、これまでの楽曲でもその片鱗をみせてきたダンスミュージックの要素を全面に押し出した作品だ。弾き語りから活動をスタートさせながら、DAWを駆使した巧みなサウンドメイクやライブパフォーマンスで人びとを驚かせ、魅了してきた北村に、そのルーツから現在地に至るまでをインタビューした。6月末に控える初のワンマンライブについても少しだけ。
ツイキャス配信から弾き語りライブへ
――まず、活動のルーツについて少しお伺いしたいと思います。どんな経緯で音楽を通じて表現をするようになったんでしょうか。
「小学校1年生の時にピアノ教室に通っていたんですけど、そのピアノの先生が歌も歌われる方で、ピアノと歌の両方を教えてくれて。その先生といっしょに地元のイベントに出て、人前に出て歌うことを経験させてもらえたんです。先生の勧めで童謡のコンクールに出たり。
その頃から、歌手になりたいと思っていました。自分で創作したいとはあまり思っていなかったんですけど」
――自分で曲をつくってライブに出始めたきっかけは?
「ライブに出始めたのは中学2年生ぐらいのときです。歌手になるという夢をかなえるにはどうしたらいいかずっと考えていて。中学生のときに、ツイキャスというアプリがすごく流行っていたんです。軽い感じでライブ配信を始めて、自分の曲を歌ったりカバーしたりしているうちに、ライブに誘ってもらえるようになりました。
私はあんまりライブハウスに行った経験もなかったので、そもそもライブハウスがどういうところかもあまりわかっていませんでした。でも、本当にやってみたいと思ったことは必ずやりたいと思ってしまう性格なので、声をかけていただいたからにはやってみようと。最初は仙台のライブハウスでのイベントでした」
――〈歌手になりたい〉と思っていた当時、憧れていたアーティストの方っていらっしゃいますか?
「小学校高学年の頃に憧れていたのは、母がすごく好きだったこともあって、Superflyさんでした。弾き語りを始めてから憧れるようになったのが、矢野顕子さんです。初めて自分の意志で〈この人みたいなことをやりたい!〉って思えた人です」