Page 3 / 4 1ページ目から読む

これはエベレストだ

 83年6月17日にアルバムがリリースされてからの状況は冒頭で触れた通りだ。同作を引っ提げての〈シンクロニシティ・ツアー〉は7月のシカゴ公演からスタートし、バンドのUSでの人気は本格的に爆発した。8月にはNYのシェイ・スタジアムで約7万人を動員。だが、スティングは〈これはエベレストだ。これ以上高い山に登ることはできない〉という思いで解散をこの日に決めたという。84年3月にツアーが終了するとバンドは活動を休止し、スティングはジャズ演奏家たちとソロ・デビュー作『The Dream Of The Blue Turtles』(85年)の制作に入る。アンディはロバート・フリップとの『Bewitched』(84年)を発表し、スチュワートもソロ・プロジェクト『The Rhythmatist』(85年)を録音/撮影した。

 以降のポリスは86年7月にスタジオで再会して新しいマテリアルの録音に向かうはずだったが、スタジオ入りの前夜に落馬して鎖骨を骨折したスチュワートがドラムを叩けず、再会の成果はベスト盤用にリメイクされた“Don’t Stand So Close To Me ’86”のみ。86年10月に小ヒットした同曲は結果的にポリスのラスト・シングルとなった。以降もスティングの結婚式で演奏したり、00年代には再結成ツアーも実現させる3人だが、決してスタジオで顔を突き合わせないことが旧友同士で演奏を楽しむ秘訣だったのかもしれない。

 今回の40周年記念盤ではDisc-2にシングルB面曲やレア・トラックが網羅され、さらにボックスの装丁も豪華な〈Super Deluxe Edition〉のDisc-3〜4にはすべて初公開となるアルバム全曲のデモ/別ミックス/アウトテイクがギッシリ計36曲も収録されている。個人作業のデモから発展していく過程を確認するだけでも楽しく、なかでもスティングがドラムマシーンで作った“Every Breath You Take”のデモがフィル・スペクター風味から簡素な完成形へと至る流れはとても興味深い。そんな蔵出し音源集のラストにはエディ・コクラン“Three Steps To Heaven”とチャック・ベリー“Rock And Roll Music”のカヴァーが収められていて、バンドの次作として50sのカヴァー集を作る案があったことにも驚かされた。一方でDisc-5〜6に収められた計19曲のライヴ音源も凄まじく、83年9月のオークランド公演という絶頂期のエネルギッシュなパフォーマンスは圧倒的だ。この先ポリス関連でこれ以上の発掘が望めるかを考えれば、ここは重厚な解説も付いた6枚組の〈Super Deluxe Edition〉を入手しておいたほうがいいかも……。

ポリスの作品。
左から、78年作『Outlandos d’Amour』、79年作『Reggatta De Blanc』、80年作『Zenyatta Mondatta』、81年作『Ghost In The Machine』(すべてA&M)

左から、スティングの2021年作『The Bridge』(A&M)、スチュワート・コープランドによるクラーク・ケントの編集盤『Klark Kent: Deluxe Edition』(Kryptone/BMG)