WATCH ME CLINGING TO THE BEAT!――英国ロックがレゲエのリズムに恋い焦がれて……
ボーイ・ジョージの音楽を語るうえで、レゲエは外せないキーワード。彼の他にも英国のロック・シーンにはレゲエ愛好家が多数いるわけで……ここではその歴史を簡単に振り返ってみましょう。 初めてロックにジャマイカ音楽を採り入れたのは、スカのリズムを敷いたビートルズ“Ob-La-Di, Ob-La-Da”と言われています。その後、ジョン・レノンは73年のソロ作『Mind Games』でもワン・ドロップを用いて、「70年代はレゲエが席巻する」と発言。おそらく前年に映画「ハーダー・ゼイ・カム」がヒットし、『Mind Games』発表の半年前にウェイラーズが世界デビューしたことも大きかったのだと思いますが、それにしたって吸収力の早さたるや! そして瞬く間にレゲエはヒップなものとなり、レッド・ツェッペリン、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズらがブームに乗っかっていきました。
ジミー・クリフの1972年作『The Harder They Come』収録曲“The Harder They Come”
70年代後半以降も勢いは収まらず、エルヴィス・コステロやクラッシュをはじめとするパブ・ロック/初期パンク勢、そこから派生するかたちで登場したポリスやスクリッティ・ポリッティといったニューウェイヴ組(当然スペシャルズら2トーン一派も外せない!)が、レゲエな楽曲を次々と披露。他にも、10CCに、ジューダス・プリーストに……と、猫も杓子も!状態だったわけです。もちろんUSにこうした動きがなかったわけではありません。でも、バッド・ブレインズを一例に、ラスタ思想/ジャマイカ文化も自身の音楽に取り込むアーティストが多いUSに対し、UKはどこかチャラいというか(精神論好きのジョー・ストラマーは除く)、「これ、カッコイイから演っちゃおうぜ」といった無邪気なノリを最優先しているように思います。だからこそ広く浸透したはずで、ついでに書くとその軽薄さが楽曲の魅力に直結していると言えるでしょう(説教臭い本場モノのレゲエより、こっちのほうが好きな人は多いはず)。
ザ・クラッシュの82年作『Combat Rock』収録曲“Rock The Casbah”
で、80年代後半に差し掛かると、マキシ・プリーストやUB40を筆頭に自国のレゲエ・アーティストがメインストリームで活躍しはじめ、ホワイト・ボーイたちはそれに怖気づいたのか、もしくはベタになりすぎて距離を置いたのか、ロック×レゲエの動きはやや鈍ることに。しかし、リリー・アレンでも、エイミー・ワインハウスでも、キティ・デイジー&ルイスでも、何でもOKですが、UKチャートを眺めてみると、2000年代突入後もジャマイカ音楽の影が散見できます。もともとUKにジャマイカ移民が多いことも踏まえつつ、それでもUSやカナダにだって移民は多いですし、そう考えると私たちが想像しているよりもずっと、英国人は純粋に音楽としてのレゲエが大好きなんでしょうね。
リリー・アレンの2006年作『Alright, Still』収録曲“Smile”
▼関連作品
左から、ビートルズの68年作『The Beatles』(Apple/EMI)、ローリング・ストーンズの76年作『Black And Blue』(Rolling Stones/Virgin)、エルヴィス・コステロの77年作『My Aim Is True』(Stiff/Hip-O)、ポリスの78年作『Outlandos D'Amour』(A&M)、ジューダス・プリーストの80年作『British Steel』(Columbia)、リリー・アレンの2006年作『Alright, Still』(Regal/EMI)
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