
6人が音を重ねていくリレー形式の作曲法
――6人のメンバーがそれぞれフレーズを作っていったわけですよね? それを、最終的にどうやって曲にしていったのでしょうか。
智之「6人が作るデモも色々あって、メロが入っていたり入っていなかったり、楽器も全パート入っているのもあるしドラムとベースと鍵盤だけ、みたいなものもあるしバラバラで。
まずはそのデモをもって、磯野がドラムのパートを打ち込んでいく。それに対しベースを入れる。次に鍵盤を入れる。次にギターを入れる。最後にマニピュレーターが音を入れる。……と、積み上げていく感じです。その過程で、このパートはもっとこうした方がいいかもねということを皆で話し合っていきました」
――リレー形式!
智之「そう、リレー形式なんですよ」
磯野「デモが組まれていても磯野がまずは一回ドラムをやり直すよね、という認識は共通でありますね。僕は自分のギターパートを考えてるよりも、ドラムを考えてリズムを整理し直してる時の方が楽しい(笑)」
智之「そこはうちのバンドの不思議なところですね。ドラムを考えるのはギター担当で、ギターのフレーズを考えてるのはドラム担当だったりする」
磯野「好きなパートがクロスしてるんですよね。役割分担とは違うから、それを無邪気にやれるのがいい。……ってことじゃない?」
藤井健司「それもあるけど……ややこしいな(笑)。自分はベーシストでもある一方で、Emeraldというバンドではマニピュレーターという肩書で効果音やエフェクト、サンプルを担当している。だから、自分は無邪気な主観性と冷静な客観性を持ち合わせている感じかな」

制約とぎりぎりのバランスを楽しむバンド
――珍しいバンドだと思います。リレー形式で作りつつ、民主的に意見を言い合える関係でもあるということですよね。
磯野「とは言え、最終的には藤井智之がOK/NGのジャッジをします。これまでもそうだったんですけど、今作では明確にプロデューサーとしてクレジットしました」
智之「自分は、フレーズのOK/NGを明確に伝える時とやや曖昧に伝える時があるんですよ。音楽理論の専門的な知識があるわけじゃないからという理由もあるんだけど、曖昧に伝えた方がメンバー各々の色が出る場合もあるから。Emeraldとしてはそっちの方が面白くなるんですよね。
あと、バンドに対して自分の色を反映させたいとは全く思わなくて。バンドのメンバーだからこそこれができたよね、ということをやりたい。だから、ある程度個々人の自由を作りたいんです」
磯野「コンセプトは決める、だけど民主的に作っていくって制作方法は、ある意味では矛盾していると思うんですよ。でも、バンドとしてはそういうことを楽しむ時期のような気もしていて。藤井兄弟って、そういったアンバランスなことにわくわくするタイプな気がするんです。
そのアンバランスさって、音数の多い/少ないとも関係する。オルタナティブR&Bって音数少ない曲が多いし、一つひとつの音をしっかり立たせていくじゃないですか。よく外部の人からも、〈Emeraldは絶対に音数を増やさない方がいいよ〉って言われるんですよ。でも、そうなのかなって思って増やしたくなる自分たちもいる。バンドとして、そういったぎりぎりのところを狙っているような気がするんです。J・ディラの音楽を聴いていても、バランスを崩してこそカッコいいと感じるじゃないですか。ビートがヨレてバランスが崩れていくぎりぎりの瞬間が一番カッコいい」