©谷口菜津子/ぶんか社

男とか女じゃなく〈本当の私〉でわかり合いたい。ジェンダー問題、旧来の常識を変革させる作品!

 〈CREA夜ふかしマンガ大賞2024〉にて見事大賞、第1位に輝いた作品で、年末12月に発表の〈このマンガがすごい!2025〉でもランキング入りが期待される話題作。勘の良い方ならタイトルを読んだだけでピンとくる、これほどジェンダー問題に深く踏み込んだ作品はないと言え、しかもそんなテーマながら深すぎる会話劇と美味しそうな料理の数々とキュートな絵でエンタメ作品として楽しませてくれることに衝撃を受けた。本来、男とか女とかじゃなく、人間同士としてステレオタイプなイメージに縛られず行動し、常に相手のことを考えて発言すべきなのに、男だから女だからと、古い古い価値観に縛られた言動を繰り返している自分に気づかされた。

谷口菜津子 『じゃあ、あんたが作ってみろよ 1』 ぶんか社(2023)

谷口菜津子 『じゃあ、あんたが作ってみろよ 2』 ぶんか社(2024)

 主人公のふたりは社会人カップルの勝男と鮎美。大学時代から続いた交際も6年目を迎え、同棲生活も軌道に乗り、そろそろ結婚したいと考えた勝男は鮎美にプロポーズをする。が、あっさりNGを喰らってしまう。美男美女のふたり。ハイスペックで完璧な人生勝ち組を信じて疑わないような勝男はまさかの鮎美から拒絶&別れを宣告された。「なぜだー」と悲嘆に暮れるところから物語は始まる。

 勝男は自分は台所に立たないクセに鮎美の手料理に上から目線であれこれアドバイスする男。鮎美に捨てられたことから、自分を変える決意をする。まずは料理、自炊に挑戦。料理好きの会社後輩、白崎が良い気づきを与えてくれる大切な存在に。またあらゆるアテにコークハイを合わせるという入社1年目の南川あみなもストレートな物言いで、良い刺激を与えてくれて勝男は変わってゆく。

 一方、鮎美は〈男に愛される女性像〉を目指してきたことから、結局自分が〈本当に好きなことがわからない〉ようになっていた。が、彼女もまた自分を変えたいと思い、美容師の渚との出会いを切っ掛けに大きく変わってゆく。偏見に満ちたザ・昭和男な勝男を最初は疎ましく見ていたら、いつの間にか彼を応援する目線になっていた。

 人間って変われるのかも知れない、という希望。この作品を切っ掛けに世の〈あたりまえ〉が大きく変わることを信じている。

※カラーページは電子版のみの掲載となります。