晴れやかに幕を開ける冒頭曲では、降りかかる不条理を笑顔で軽く去なしてしまうような剛胆さをみせ、ダミアン・マーリーを迎えた“Dey”では過去最高と言える強靭なアンサンブルを繰り広げる。豊潤に鳴り響く全ての音はシェウンが新たな境地へ足を進みいれた事を示し、かつてない充実感と開放感を楽曲にもたらしている。この非の打ち所の無い傑作への道筋を照らしだしたのはおそらくプロデューサーとして起用されたレニー・クラヴィッツの新古をナチュラルに繋げる感性や形式に捉われないしなやかなセンスであろう。アフロビートの王としての貫禄を遺憾なく発揮したシェウン・クティの5作目。