ジョナサン・グレイザー監督が、「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」(こちらも傑作なのでぜひ)から10年ぶりの新作は、斬新な発想によって今までになかったアウシュビッツ強制収容所を描き、カンヌ映画祭グランプリ受賞やアカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞している。アウシュビッツ強制収容所の隣に豪奢な新居を建てたルドルフ・ヘスの日常生活からアウシュビッツの煙突の火柱、煙や怒号がチラリズム的に垣間見え、鑑賞者それぞれが最大級の殺害描写を自身の知見から想像させる。オープニングの暗い画面に微かに鳥の囀りなどを聴かせ、聴くことを鑑賞者へ意識させる演出もすごい。