2024年、スタートから5周年を迎えたレーベルNEWFOLK。ラッキーオールドサン、台風クラブ、家主や田中ヤコブといった発足時からのアーティストの作品をリリースしつつ、UlulU、山二つ、THE HOLDENS、ゾッキ、天国旅行といった新進気鋭のバンドのアルバムも怒涛の勢いで制作。そのカタログは拡大しつつも、独自の美学や哲学に貫かれている。

今回は、5周年を記念して主宰者の須藤朋寿にライターの松永良平(リズム&ペンシル)が話を聞いた。音楽への深い愛やNEWFOLKがどんなことを考え運営されているのか?といったことはもちろん、東京中心主義や一極集中の現状、そして現在の音楽シーンやビジネスに対する思いも明かしてくれた。 *Mikiki編集部

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NEWFOLK設立前夜の物語

──須藤さんとの出会いは、中井寛樹さんが主宰していたkitiレーベル(mmm、oono yuuki、平賀さち枝、麓健一、ラッキーオールドサンらが在籍)のスタッフとして、でしたね。中井さんがkitiの運営を辞めることになり、それを引き継いだのが須藤さんだった。

「そうです。2016年の秋くらいに中井さんから〈(レーベルを)やめようと思ってる〉と聞かされました。当時kitiはアートユニオンという会社の社内レーベルで、僕も中井さんもそこの社員でした。僕もkitiのアシスタントをしながら、社内でBoyishなどをリリースしていたBouquetというレーベルをやってたんです。kitiとしては、ちょうどラッキー(オールドサン)のセカンド『Belle Époque』(2017年)のレコーディングを吉祥寺のGOK SOUNDで始めるタイミングでしたね。実はその頃、アートユニオンという会社自体も経営が思わしくなくて、レーベルやCDの流通業も全部やめようという流れになっていたんです」

ラッキーオールドサン 『Belle Époque』 kiti(2017)

──当時、須藤さんにとって中井さんは師匠とも呼べる存在だったそうですが、その中井さんから「kitiを引き継いでくれないか」と託されたわけですよね。

「でも、最初は受け入れ難かったです。kitiというレーベルがすごく好きだったし、kitiから出ている作品の背後には、どれも中井さんのある種のセンシティブな美意識が反映されている。中井さんの審美眼があってこそのレーベルだったから、僕が受け継いで続けることはできないなと思いました。ただ、ラッキーオールドサンのリリースは決まっていたので、それは精一杯やらなきゃなという思いがあって、そういう意味では業務を引き継いだんですけど、kitiの名前で新しい作品を出すことは自分にはできないと思ったんです。中井さんが積み上げてきたものを濁す気がして」

──須藤さんの言う「中井さんらしさ」、わかる気がします。

「それは、八丁堀の七針に当時よく出入りしていたアーティストの個性や空気感とも結びついていたとも思います。七針にも鳥獣虫魚というレーベルがあるんですけど、そことkitiで補完しあっていて、兄弟みたいな関係性だったと思います」