パンク~オルタナの現在地を覗いてみよう。地殻変動真っ最中のシーン(の断片)を伝える8枚!!

PK shampoo 『PK shampoo.log』 コロムビア(2025)

関西出身の4人組がメジャー・デビュー! “死がふたりを分かつまで”など配信での人気曲を揃えた本アルバムは、ギター・ノイズやリヴァーブにトラッシュ感が漲っており、耳に痛いサウンドは間違いなく地下パンク由来のもの。その一方、ヤマトパンクスのうわずった歌声やメロドラマティックな世界観は歌謡曲~V系に近い感覚もあり、この特異な魅力は一度ハマるとなかなか抜け出せなさそう。

 

くだらない1日 『どいつもこいつも』 WACK(2024)

エモやポスト・ハードコアをルーツに持つ3ピースのサード・アルバムにして初の全国流通盤。マス・ロック譲りの重厚かつ複雑なアンサンブルを鳴らしつつも、それ以上に抒情的な〈歌〉を前景化させており、“誕誕”や“moment”などの切迫した歌詞には胸を抉られる。本作のリリースと同時にWACK所属を発表。直近の動きはさほど活発ではないものの、〈明日〉が気になるバンドだ。

 

雪国 『pothos』 Pothos(2024)

2003年生まれの3人によって2023年に結成された3人組バンドのファースト・アルバムは、ソフト・サイケな歌モノ、ヒリヒリとした質感のオルタナティヴ・ロックという2つの側面を持っており、演奏には〈ラウド・クワイエット・ラウド〉の美学も感じさせる。アーティスト写真やアートワークからは、何者をも寄せ付けんとするムードが漂っており、その面では初期ミツメの孤高さを思い出したり。

 

Homecomings 『see you, frail angel. sea adore you.』 IRORI/ポニーキャニオン(2024)

最近、雪国やkurayamisaka、Hammer Head Sharkら新世代オルタナ勢との対バンが目立ってきたホムカミだが、その導線となったのは、グランジ~シューゲイザー的な音作りに舵を切った本作だろう。ドリルンベースとハードコア・パンクを組み合わせた“blue poetry”、美麗なテクノに接近した“Air”など、リズムの多彩さでも、ドラマー脱退後の新たなバンド像を示していた。

 

Vital Club 『in your hand』 KiliKiliVilla(2025)

FRIDAYZの酒井健太が営む山形・酒田のライヴハウス、hopeを根城にしている3人組パンク・バンドの2作目。鼻にかかった歌声と轟音ギター、全力で坂道を転がっていくようなドラムというダイナソーJr的なサウンドをシグネイチャーとする一方、以前より歌の輪郭が格段に濃くなっており、“Rock ‘n’ Roll”や“Hey, I know”といった楽曲の人懐っこさは、ウィーザーや初期NUMBER GIRKのリスナーにも刺さりそう。KiliKiliVillaからのリリースというのも相まって、CAR10以降の世代がようやく登場した感も。

 

OwL 『Hallo』 CAFFEINE BOMB(2025)

メロディック・パンク・シーンで注目を集めている東京発の3ピース・バンドが、名門レーベルのCAFFEINE BOMBからリリースしたセカンド・アルバム。すぐさまにモッシュピットへと飛び込みたくなるジャキジャキとしたギター・サウンドと性急に駆ける2ビート、シンガロング必至のメロディーが爽快で、なにより聴き手の心の中心を一直線に射貫くような凛とした歌声が格別だ。

 

TENDOUJI 『TENDOUJI』 天童児(2024)

昨年に結成10周年を迎えた、松戸出身のロック・バンド。アニヴァーサリー盤にあたる4作目は、快楽指数満点のメロディーに磨きをかけつつ、エレクトロニックなトリートメントでモダンに仕上げた“Jellyfish”、デジタル・ハードコア調の“TENDOUJIのテーマ”、ビッグ・クラウン諸作を思わせる“Just Because”など多彩な曲調が楽しい。彼らの標榜する〈イージー・パンク〉をさらに開花させた一枚。

 

ANORAK! 『Self-actualization and the ignorance and hesitation towards it』 Shore&Woods(2024)

過去にくだらない1日の高値も在籍していたメロディック・パンク~エモ・バンド。Peterparker69などの存在が刺激になったという本セカンド・アルバムは、電子音楽を大胆に導入したプロダクション重視の音作りへと舵を切り、従来のリスナーを驚かせた。決して情報量は少なくないハイパーなサウンドながら、整理の上手さもあり鈍重で混沌としたところはなく、聴き心地は実に清涼。