マルーン5の来日公演がついにスタートした。彼らにとってもはやホームとも言えそうな東京ドームを舞台に、今回は計3公演が行われる。過去の名曲などベストヒットな内容となっている来日公演より、2月6日に行われた公演初日の公式レポートが到着した。 *Mikiki編集部


 

観客を煽らず、ひらすらに音楽を届ける

マルーン5の来日公演初日は、オンタイムで始まった。客電が落ちると、周囲から「19時ピッタリ!」という驚きの声が上がり、観客の集中力が一気に高まるが、暗闇に流れてくるのはハリー・ベラフォンテの“Jump In the Line”。昨年あたりからこのラテンナンバーを使っているようだが、会場の少しの戸惑いは、アダム・レヴィーンの歌声で大歓声に変わる。オープニングを飾ったのは“Animals”。ここからほぼノンストップで、楽器チェンジなどの微妙な間もなく、ほどよい緊張感のなかでヒット曲が演奏されていく。

あえて〈ほぼ〉としたのは、3曲目の“This Love”のあと、アダムのMCがあったからだ。そこで彼は、「日本には20年以上も来ていて、最初は2004年で、来るたびにどんどんビッグになっている」と、観客への感謝を口にしたが、確かに前回の2022年は、東京では東京ドーム2Daysだったが、今回は3Days。20年の歳月は、親子連れの姿が物語っている。前列の親子は、お母さんが“This Love”や“Sunday Morning”で盛り上がり、お子さんは“Memories”を撮影していた。

前回もそうだったけれど、亡きマネージャーに捧げた“Memories”ではスマホのライトがドームを神々しく彩り、歌の最後で天を見上げるアダムの表情は美しかった。

そのアダムは、ドジャースのユニフォームを着ている。彼らの街LAの大火事をサポートする意味かと思ったが、そこに言及することはなく、背中には漢字で大谷翔平とある。キーボードのPJモートンは、WBCでの侍ジャパンのユニフォームを着用。私の位置からは背中が見えなかったけれど、彼も大谷選手の背番号だったようだ。そういえば、前回のアンコールではギターのジェイムズ・ヴァレンタインがサッカー日本代表のユニフォームに着替えていたけれど、それをアピールして、喝采を集めるということはしない。

〈しない〉ことで言うと、彼らは〈TOKYO〉や〈JAPAN〉の連呼で煽ることもない。“Harder To Breathe”の前に少しマット・フリンのドラムソロがあり、“Sunday Morning”のイントロでPJモートンのキーボードがフィーチャーされたり、“This Love”でアダムのギターソロがあったりしたが、ライブで見せ場とする長々としたソロ演奏はない。その代わりじゃないけれど、長かったのは“Lucky Strike”の後のコール&レスポンスだった。

また、彼らは曲のタイトルもほとんど言わない。“What Lovers Do”と“Makes Me Wonder”から続けて演奏されたのがプリンス“I Wanna Be Your Lover”のカバーであることも途中で気付いた。

例外だったのは、PJモートンのソロ楽曲“Heavy”で、アダムがPJを熱く紹介したこと。この“Heavy”は、彼の2013年のソロアルバム『New Orleans』からの曲だ。ニューオーリンズ育ちのPJが奏でるキーボードと歌は、マルーン5のキャッチーでポップなヒット曲とは一線を画す、ソウルフルなファンク。おそらく初めて聴く人もいるはずだ。それでもアメリカ南部の魂が込められた黒人音楽が高揚感を掻き立てるのだろう。会場全体が新たな熱気を帯びる。個人的には昨年の単独公演を見逃したので、うれしい1曲となった。