浜浦彩乃がメジャーデビューシングル『HGL』を2025年3月19日にリリースした。こぶしファクトリーのメンバーとして約5年半にわたり活動したのち、グループ解散後は舞台を中心に俳優として多方面で活躍し続けてきた彼女が、一人のソロアーティストとして再びデビューを果たす。こぶしファクトリーの解散以降、どのような心境でいたのか、そしてなにをきっかけにソロアーティストとして歩み始めようと思ったのか。彼女と久々の再会を果たしたライターの南波一海が話を聞いた。 *Mikiki編集部

こぶしファクトリー解散後は引退も考えた
――いきなり5年前に遡ってしまいますが、2020年3月にコロナが猛威をふるい始めたタイミングでこぶしファクトリーは解散しました。浜浦さんを含め、当時のメンバーはグループの形が変わっても続けるという選択肢を選ばなかったわけですよね。あの5人の形を大事にしていたと思うんです。
「そうですね。解散ライブが無観客になっちゃったのは悔しかったですけど、自分のなかではやりきったと思ってました」
――当時の浜浦さんはその先のことをどう考えていましたか?
「あのときは芸能活動を続けるかどうか迷っていたんです。こぶしが解散するとなって、芸能活動をするのか、それとも一般の人に戻るのかというのをすごく悩んだ時期でした。続けようと思ったのは、ファンの人の声が多かったからです。私は自分のために頑張れる人間じゃないので、ファンの人がいたからこの活動を辞めなかったのかなって思います」
――もしファンの声がなかったら、場合によっては引退もありえた。
「引退も考えました。コロナが始まったばかりでどうなるのかわからなかったですし。でも同時に、昔から女優業をやりたかったので、一人になったからそこを目指したいというのもありました」
――そうして演劇やミュージカルの世界に舵を切ることになっていきます。浜浦さんとしてはソロで歌手活動をするとは考えていたのでしょうか。
「考えてなかったですね。やっぱりこぶしファクトリーだったからこそ歌をやる意味があったので。メンバーには歌の面でもすごく支えてもらっていましたし。でもミュージカルに出たりすると、ファンの方から〈やっぱり歌っている姿が見たい〉という声をいただくことが多くて。私に求められているものは歌なんだなと思ってもいました」
――2022年12月には〈横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦☆girls edition〉に出演されました。あのときに歌手活動もしていくのかなと思ったんですよね。
「かえでぃー(加賀楓)の卒コンと被った日ですよね(笑)。自分の興味があることであれば声をかけていただいたらやりたいというのはありました。シティポップは曲調も好きだったので、ぜひ歌いたいなと思ってイベントに参加させていただいたんですけど、卒業する前もしてからも歌には自信がなかったので、ソロでライブしたいとはそこまで思ってなかったんです」
――自信がないんですか?
「ずっとないですね(笑)。やっぱり、こぶしのメンバーがいたから歌えてたんですよ」
――ただ、ファンイベント的な場所では歌を続けてもいて。
「ライブは舞台の空いた期間とか誕生日の近くとか、年に3~4回くらいやってきました。それでも数が少ないという声もあったので、それには応えたいとは思っていて。オリジナル楽曲が増えれば、よりライブもしやすいのかなというのがありました」

ミュージカル「LILIUM」での再会と成長
――いま、こうしてソロシンガーとしてCDデビューを迎えるというのは、ファンのみなさんが求めていただけでなく、浜浦さん自身にも心境の変化があったのではないかなと思うのですが、いかがでしょう。
「ミュージカル『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』に出たことが大きくて。もともとモーニング娘。とスマイレージでやっていた舞台の新約版をやるということで、オーディションがあったんです」
――全キャストをオーディションで選ぶという試みの舞台で。浜浦さんも自分から受けに行ったんですよね。
「イチから受けました。末満さん※もハロプロから採ろうとか思ってなかったみたいで、あとからバランスと実力で決めてくれたと聞いて、少し自信にもなりました」
※末満健一:脚本家、演出家、俳優として活躍。「LILIUM」では作・演出を担当
――〈実力に長けた〉人を募集すると謳ってましたよね。
「まわりはミュージカルが得意で歌が上手な女の子ばかりでしたし、ハロプロのOGの方とオーディション会場で会ったりもして刺激を受けました。そこでスノウ役に受かったことで、もっと頑張らなきゃいけないという思いも強くなりました。
末満さんは歌に厳しい演出家さんでしたし、このままだと自分の歌のレベルが低いと感じて、ボイストレーニングにもすごく通ったんです。ミュージカルとJ-POPの歌い方は全然違って、私はどうしてもハロプロっぽさが出ちゃうんですよね。しゃくりとかのクセをなくさなきゃいけないから、そこをトレーニングしたりしました。
もともとハロプロがやっていた作品だったので理解度はあるつもりでしたし、稽古のときにYOSHIKO先生※にもお会いしたんです。こぶしを卒業してまた会うことができたのも刺激になって、より気持ちが引き締まりました。『LILIUM』のおかげで成長できた部分はかなり大きいと思ってます」
※YOSHIKO:ダンサー、振付師としてこぶしファクトリー含むハロプロ関連曲の振付を多数手がける。新約版「LILIUM」でも振付を担当