この5人からの最後の手紙は、文句ナシの最高傑作!

 大阪・堀江で2012年に始動して以来、AORディスコ、フュージョン、日本ではシティー・ポップなんて呼ばれていたような〈ラジカセ/ウォークマン世代〉のサウンドをベースにしたメロウでノリの良い楽曲を看板に、ぐんぐん注目を集めてきたEspecia。昨年2月にはメジャー・デビューし、その勢いとチャームをさらに拡散中の彼女たちが、いよいよメジャーでは初めてのフル・アルバム『CARTA』を届けてくれた。オープニングを飾る“Clover”は初手合わせの作家陣(作詞:山根康広、作曲:藤井尚之)から託されたミッドテンポのハード・ロック・ナンバー(ギターはKASHIF!)で、初っ端から想定外の楽しさを呼ぶ仕上がり!

Especia CARTA VERSIONMUSIC(2016)

冨永悠香「〈夢を奪いに行こう〉とか〈心ひとつに叫べ〉とか、いままでにないぐらい歌詞がストレートで。今回は他の曲も気持ちが前に出る詞が多いので、いままでよりも歌の世界に入りやすかったですし、言葉に魂を込めてます!」

 というのもひとえに、Especiaというグループならびに個々のメンバーのポテンシャルが格段に上がってきたからこそ、制作陣が示唆することのできた内容とも言えて。

森絵莉加「大人っぽい世界観の歌を背伸びして歌っていたところから、少しずつ等身大に近づいて、リアルに想像できるようにはなりましたね。例えば“センシュアルゲーム”(2013年の『AMARGA』収録)っていう不倫がテーマになった曲とか、実際……いや、経験ないですけど(笑)、不倫をしたっていう体で歌えるぐらい想像力が豊かになりました」

 全12曲から成る『CARTA』は、昨夏の両A面シングル『Aviator/Boogie Aroma』のニュー・エディットと、MINMIの企画盤に提供した“サタデー・ナイト”のほかは、すべて新曲で構成。基本ラインはアーバン路線で安心印を押しつつ、件の“Clover”のように新鮮な風も吹き込みながら、深くなったグループの懐を見せつけてくれる作品……ということで、5人それぞれのお気に入り曲を訊いてみました!

三ノ宮ちか「私は“Interstellar”ですね。ラップがあるので歌ってても楽しいし、ダンスにしてもドラムンベースの速いステップなので、踊ってても楽しい。Especiaの曲のなかでも珍しい曲調かなって思います」

三瀬ちひろ「“Fader”もラップが入ってる曲で、1番は絵莉加が主旋を歌ってちかが間に入って、2番では私が間に入ってくんですけど、Bメロは悠香が全部歌って、もなりがサビをひとりで歌う――そういう歌割もいままでにない感じでおもしろかったです」

脇田もなり「“Mistake”が好き。イントロがサックスで始まって、すごくアーバンというか、サビは英語も混ぜて歌ったりしてるし、〈Umm...〉とか色気のある歌い回しも入ってるんです(笑)」

絵莉加「“Over Time”を聴くとのんびり時間が流れるというか、個人的には心が安まるなあって思ってる曲です。別にいま病んでるわけじゃないですけど(笑)、ひとりでぼーっとしたいときに聴くとすごくリラックスできる」

悠香「“Saga”のシンセ使いがすごく好きです。前にあった“シークレット・ジャイヴ”という曲もそうなんですけど、イントロが結構ミステリアスで、後半で晴れ間が出てくる――物語みたいな構成の曲なので、歌っていても演技しているような気分になれるんです」

 想定外を盛り込みながらも期待以上の作品を届けてくれたEspeciaですが、この春から活動拠点を東京に! それに伴い、2月いっぱいをもって、ちか、ちひろ、もなりの3人が卒業してしまうのは寂しいけど……。

絵莉加「卒業する3人には〈Especiaをやめなきゃよかった、って思わせるぐらい大きな存在になってほしい〉って背中を押されてるので、それを励みにしてがんばりたいなって思います!」

悠香「3人が卒業ってなって、周りから見たら心配しかないと思うんですよ。やっぱりその心配を覆すぐらいがんばりたいと思うし、いままでいただいた素晴らしい曲が埋もれてしまわないように、もっと届けられるように歌い継いでいきたいし、その気持ちをバネにがんばっていきます!」