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ディアンジェロ“Untitled”を初めて聴いたとき言葉を失った

──次に選んだのはディアンジェロのサードアルバム『Black Messiah』(2014年)。

D'ANGELO AND THE VANGUARD 『Black Messiah』 RCA/ソニー(2014)

「本当はファーストの『Brown Sugar』(1995年)か『Voodoo』(2000年)がよかったんですけどレコードで見当たらなくて。でも、ディアンジェロが私の音楽に大きな影響を与えたことには変わりはないから、これにします。私がR&Bやソウルミュージックが好きになったのは彼のおかげ。このサードだって、完成まで14年かかったんでしょう? 彼の完璧主義者としての側面をとても尊敬してます。

ディアンジェロを聴くと、ハッピーな気分、悲しい気分、チルアウトな気分……どんな気分にもなれるんです。彼のライブパフォーマンスも大好き。特に“Untitled (How Does It Feel)”のライブバージョンは何回も聴きました」

──『Voodoo』はあなたたちの世代にとっても、もはや定番以上の存在だと思いますが、あなたが生まれた年のリリースだし、もちろんリアルタイムではないですよね? どうやってディアンジェロの音楽と出会ったんですか?

「『Voodoo』と『Brown Sugar』を同時に知って聴いてましたね。人生の中で初めて聴いた瞬間を覚えてる曲って、私の場合、10曲にも満たないんです。だけど、ディアンジェロの“Untitled (How Does It Feel)”を聴いたときのことはずっと忘れないと思います。

15歳くらいだったかな。父か母のどちらかがあの曲をかけていたんですけど、その頃の私はプリンスに夢中になっていたから、最初は似てる感じだなと思ったんです。でも、曲が後半に至るにつれて、どんどん惹きつけられてしまって。文字通り、音楽に圧倒され、言葉を失いました。それからは〈もう一回かけて〉と何度も何度もお願いしたし、〈何故もっと早くにディアンジェロを教えてくれなかったの〉って両親に腹を立てたりしたくらいでした(笑)」

──その頃、あなたは15歳。同世代の友だちとは音楽の話はしてました?

「あんまりしなかったかな。友だちはもっと普通のポップミュージックを聴いてたし。私とディアンジェロ好き同士で話ができるのは両親だけでした(笑)。でも、親とそういう会話ができるのは楽しかったですね」

 

ギターからファッションまでプリンスのあらゆる表現から影響を受けた

──次は、ディアンジェロの前からマヤさんのアイドルだったプリンス。1985年にプリンス&ザ・レヴォリューションでおこなったライブを収録した『Live』(2022年)です。

PRINCE & THE REVOLUTION 『Live』 NPG/The Prince Estate/Legacy/Sony/ソニー(1985)

「プリンスの曲なら何でも聴きます。プリンスを聴いて育ちましたから。いつが最初だったか思い出せないくらいずっと好きで、ほとんど今までの一生分くらい聴き続けてるんですよ。

いちばん大きな影響は彼のギターかな。ファッション面も、自分自身を表現する術も、彼から受けたインスピレーションはとっても大きい。自己表現を最大限までやった真にオリジナルな人。亡くなった日(2016年4月21日)のことは忘れられません。床に横たわって5時間ずっとギターを弾いてました」

──プリンスのオリジナルアルバムで1枚選ぶとしたら?

「『Purple Rain』(1984年)ですね。私は長い曲が好きで、長いギターソロが好きで、雨も大好き。だから、あのアルバムは、美しくてエモーショナルで完璧です(笑)。子どもの頃は、寝る前に毎晩、iPodで『Purple Rain』か『Diamonds And Pearls』(1991年)を聴いていた時期がありました。聴きながら心地よく眠りに入れたんです。

他にもプリンスのエピソードといえば、こんなことがありました。私はブリット・スクールというアートカレッジに通ったんですけど、最初は進学すべきか迷っていたんです。当時の私はダンサーになりたいという夢もあったから。ブリット・スクールに行ったら、ダンスの道は諦めることになる。ひとつのカゴにたくさんの卵は入らないですから。そのとき、母が私にこう言ったんです。〈こんなとき、プリンスならどうすると思う?〉って。たぶん、母は私に音楽をやってほしかったんでしょうね。その言葉を聞いて、私はブリット・スクールに進むと決心したんです」

──ブリット・スクールは、エイミー・ワインハウスやアデルも通っていたことで知られていて、日本の音楽ファンにとっても気になる学校なんです。実際、どんな環境だったんですか?

「ブリット・スクールに通った2年間は最高でした。あの学校には、音楽、演劇、アート、写真などたくさんのクリエイティブな人たちがいて、そういう人たちと出会って、一緒にコラボするんです。私のデビューアルバムのデザイナーも、今のバンドメンバーも学校で知り合いました。たくさんの素晴らしい人たちと一緒に仕事をすることを学び、その関係を生涯持ち続けられる。それは最高に楽しいですよ」

──授業は厳しいんですか? アカデミックな感じ?

「まさか! 映画『スクール・オブ・ロック』を生で観ているような感じかな(笑)。だって試験もないんですよ。自分たちのアートを実地で試すことが試験なんです。音楽科なら、生徒はみんなでバンドを組んで、会場を探し、予約して、リハーサルして、サポートアクトを探して、チケットを売って、本番をやる。それをすべて自力でやることが試験の代わりなんです」