
ブルーノートを新解釈する『Blue Note Re:imagined』の第2弾!
ブルーノートの創立81年目にあたる2020年にコンパイルされた『Blue Note Re:imagined』は実に興味深い内容だった。これまでも古典をさまざまな方向から取り上げる名曲トリビュートは企画として珍しいものではなかったかもしれないが、英デッカによって制作された同作は賑わいを見せるUKジャズ・シーンの人気者たちが大挙参加したカヴァー/リメイク集で、その時点でシーンの顔役と目されていたシャバカ・ハッチングスを筆頭に、ジョルジャ・スミスやジョーダン・ラカイ、エズラ・コレクティヴ、ヌバイア・ガルシアら『We Out Here』以降の面々がひしめく豪華な一枚に仕上がっていた。また、同作以降にアルバムが話題になったポピー・アジュダやエマ・ジーン・サックレイ、ブルーノート入りしたブルー・ラブ・ビーツなどもいて、ある種の先物買い的なショウケースとしても結果的には機能していたわけだ。
そんなわけでこのたび登場する同企画の第2弾『Blue Note Re:imagined II』にも期待してしまうのが当然である。今回のラインナップには『We Out Here』組からさらに先のメンツが揃い、すでに人気のエゴ・エラ・メイやヌビヤン・ツイスト、オスカー・ジェロームらフィーリングがブルーノートのイメージをより大きく膨らませている。
もちろんこれから大きくなりそうな新進気鋭の面々もエクレクティックなモダンさを保証し、前回同様に〈ブルーノート〉や〈ジャズ〉を媒介として集まった、広い意味での現行UK音楽の先鋭たちのショウケースにもなっているのは言うまでもない。
2020年の『Blue Note Re:imagined』(Decca)
そんなわけで……ラインナップを駆け足で紹介しておこう!
1. YAZZ AHMED “It”
ヤズ・アハメドは2019年にリーダー作『Polyhymnia』(Ropeadope)を発表しているバーレーン出身のトランぺット/フリューゲルホルン奏者で、レディオヘッドやエヴリシング・イズ・レコーデッドとの共演経験もある注目株だ。チック・コリアによるオリジナルはソリッド・ステイト原盤の69年作『Is』(Solid State)に収録されていた。
2. CONOR ALBERT “You Make Me Feel So Good”
FKJやトム・ミッシュの影響が濃い南ロンドン出身のコナー・アルバートはサブスク人気も絶大なマルチ演奏家で、4月の『Collage 2』に至るまでコンスタントに作品を配信中。マイゼル兄弟による原曲はボビー・ハンフリーの75年作『Fancy Dancer』収録の人気曲だが、コナー版のメロウネスも実にいい!
3. PARTHENOPE “Don’t Know Why”
オリジナルはもちろんノラ・ジョーンズの2002年作『Come Away With Me』より。ここでカヴァーするパルテノペはノラ近作にも関わるトーマス・バートレットのユニット……のほうではなく、リーズ出身の女性アーティスト。セレステの曲に参加しているサックス/フルート奏者のようだが、歌声もこんなに麗しいのか。
4. SWINDLE “Miss Kane”
スウィンドルはダブステップから生音のファンクやフューチャー・ジャズに移行してロンドンの才人で、昨年の『The New World』(BMG Rights)に至るまで自作を発表する傍ら、コージェイ・ラディカルらのプロデュースでもお馴染み。ネタ使用例も多い原曲はドナルド・バードの73年作『Street Lady』に収録。
5. NUBIYAN TWIST “Through The Noise (Chant No. 2)”
ドナルド・バードの63年作『A New Perspective』からのナンバーを猥雑なグルーヴで聴かせるのは、マルチ演奏家のトム・エクセルを中心とするロンドンの10人編成アフロ・ジャズ・バンド、ヌビヤン・ツイスト。2021年作『Freedom Fables』(Strut)に客演していたリア・モランはここでもヴォーカルを交えている。
6. EGO ELLA MAY “The Morning Side Of Love”
チコ・ハミルトンの75年作『Peregrinations』に収録されていたオリジナルを独特の空気感を湛えたヴォーカル世界へと再解釈して聴かせるのは南ロンドン出身のエゴ・エラ・メイ。ヌビヤン・ツイストやブルー・ラブ・ビーツ、セオ・クロッカーの楽曲に客演するほか、2019年の『So Far』(Tru Thoughts)などソロ作品も大注目のジャジーな期待株だ。
7. OSCAR JEROME “(Why You So) Green With Envy”
オスカー・ジェロームはココロコなどでも活動した南ロンドン拠点のギタリストで、2020年のソロ作『Breathe Deep』(Caroline International)にてネクスト・トム・ミッシュ的なマルチ志向を露わにしてきた逸材だ。原曲はグラント・グリーンの61年作『Green Street』収録で、ここではオスカー・ワールドピースのラップも効果的。
8. DANIEL CASIMIR feat. RIA MORAN “Lost”
ヌバイア・ガルシアやビンカー・ゴールディング作品でも演奏するダニエル・カシミールはロンドンの敏腕ベーシスト。最新作は今年リリースの『Boxed In』(Jazz Re:freshed)だが、そこで歌うリア・モランをこちらでもフィーチャーしている。ウェイン・ショーターの原曲は65年に録音され、79年の『The Soothsayer』で世に出た。
9. THEON CROSS “Epistrophy”
ザ・スマイルのバックでも演奏していたテオン・クロスは、サンズ・オブ・ケメットやシード・アンサンブルで活動するほか、昨年はソロ作『Intra-I』(Marathon Artists)も出しているトロンボーン/チューバ奏者で、ここでは野太いチューバを響かせる。セロニアス・モンクの大定番となる原曲は48年作『Genius Of Modern Music, Vol. 1』所収。
10. MAYA DELILAH “Harvest Moon”
マヤ・デリラは別掲したコナー・アルバート作品への参加やサム・ヘンショウとのコラボ“Breakup Season”のヒットで知られるロンドンのシンガー。ここで取り上げたのはニール・ヤングの名曲ながら、ブルーノート的にはもちろんカサンドラ・ウィルソンの95年作『New Moon Daughter』におけるカヴァーに近いイメージで披露している。
11. KAY YOUNG “Feel Like Makin’ Love”
2021年のEP『This Here Feels Good』(PIAS)を経てロック・ネイションと契約したシンガー/ラッパーで、ここからの飛躍が予想されるケイ・ヤング。ロバータ・フラックの原曲はボブ・ジェイムスからディアンジェロまでが取り上げた名曲だが、ここではマリーナ・ショウ『Who Is This Bitch, Anyway?』(74年)収録のヴァージョンに通じる風情で。
12. VENNA & MARCO BERNARDIS “Where Are We Going?”
スノー・アレグラ“Dying 4 Your Love”の制作に揃って名を連ねていた、ロンドンのドラマー/サックス奏者であるマリク・ヴェンナとサックス奏者のマルコ・バーナーディスによる洒脱なコンビ・チューン。原曲はドナルド・バード『Black Byrd』(73年)に収録され、マーヴィン・ゲイやレミー・シャンドのカヴァーも知られている。
13. REUBEN JAMES “Infant Eyes”
神童と謳われたルーベン・ジェイムスはトム・ミッシュや宇多田ヒカル、サム・スミス、コナー・アルバートら錚々たる面々との共演歴があり、アルバム『Tunnel Vision』も発表しているキーボーディスト/プロデューサー。オリジナルはウェイン・ショーターの64年作『Speak No Evil』所収の著名なナンバーだ。
14. BINKER GOLDING “Fort Worth”
ビンカー&モーゼスなどモーゼス・ボイドとの演奏で知られるビンカー・ゴールディングは、ソロ作『Dream Like A Dogwood Wild Boy』(Gearbox)も記憶に新しいロンドンのサックス奏者。ジョー・ロヴァーノの91年作『From The Soul』に収録のオリジナルを、サラ・タンディのピアノも交えて小気味良く聴かせる。
15. CHERISE “Sunrise”
シード・アンサンブルやヌビヤン・ツイストに客演し、サントラ『Downton Abbey: A New Era』(Decca)では“Crazy Rhythm”にフィーチャーされていた新進ジャズ・シンガーのチェリーゼ・アダムス・バーネット。ノラ・ジョーンズ『Feels Like Home』(2004年)所収の原曲をドラマティックな歌唱で聴かせてくれる。
16. FRANC MOODY “Cristo Redentor”
ネッド・フランクとロン・ムーディのコンビを軸にしたロンドンのファンク・バンドで、ポップなニュー・アルバム『Into The Ether』(Juicebox)もリリースしたばかりのフランク・ムーディ。またしてもドナルド・バード『A New Perspective』収録のオリジナルはカヴァーやサンプルも膨大なリサイクル人気の高い逸曲だ。
17. BIGYUKI “The Creators”
コンピ第1弾におけるKan Sanoのボートラ参加に続き、今回は昨年の快作『NEON CHAPTER』(ユニバーサル)も記憶されるBIGYUKIがエントリー! ここではボビー・ハッチャーソンの70年作『Now!』収録曲を取り上げ、原曲の猥雑な賑々しさを活かしつつPファンク的なフリーキーさも挿入してグルーヴィーに聴かせてくれる。
