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すぐわかる引用はしたくない。重要なのはエッセンス

――15歳からギターを弾いているということですが、その頃はどんな音楽を聴いていたのでしょうか。

「小学生の時にサザン(オールスターズ)が人気になって、箒をギターがわりにして桑田佳祐のモノマネをやったりしてたんです。高校に入った時にギターを買ったんですけど、姉がクリームのファースト(『Fresh Cream』)のCDを誕生日にプレゼントしてくれて、それを聴いて耳コピをしていました。

それで、こういうのが他にもないかな、と思って、レンタルレコード屋でローリング・ストーンズを借りたんです。そして、ストーンズがブルースの影響を受けていることを知ってブルースを聴くようになり、そこからブラックミュージックを聴くようになったんです。

姉と兄がいるんですけど、姉は『ビックリハウス』なんかを読んでいるサブカル系。兄はインディーズブームに影響されて『DOLL』とかを読んでいるパンク好き。2人とは違うものを見つけようと思ってブラックミュージックに興味を持ったというのもありますね」

――自分が見つけた世界だからこそ愛着があるんでしょうね。このアルバムの曲を聴くと、ギターの演奏も含めていろんな音楽の匂いがします。それはサンプリング的にネタとして過去の音楽を引用するのではなく、キハラさんの記憶や身体に刻みこまれたものが溢れ出てきているという感じがします。

「すぐわかるような引用はしたくないんです。重要なのはエッセンスだと思っているんで。

例えば“Painted BLACK”は、カーペンターズとかいろんな人たちがカバーしている“Our Day Will Come”みたいな曲を作ってみようと思ったんですけど、そこで“Our Day Will Come”を聴き直さないで、自分の頭の中にあるメージだけで作ったんです。20代の頃はいちいち聴き直して曲を作っていたんですけど。その結果、不思議なことにテレヴィジョンみたいな曲になった(笑)。それが面白くて」

――このアルバムはキハラさんの音楽人生から生まれたもの。音楽に対する知識、それ以上に愛が詰まっている作品だと思いました。アルバムには“VINYL FREAK”というロックバーらしき店を題材にした曲がありますが、アルバム自体がそういう音楽に満ち溢れた場所のようですね。

「うわー、それはすごく嬉しいです。取材は終わりにして、このまま飲みに行きたい(笑)!」

――この曲に書かれている店は実在するんですか?

「あります。GT’ズの鍵盤メンバーがやってるソウルバーで三軒茶屋にあるんです。そこはアナログしか回さない店で、鈴木慶一さんが三茶に住んでいた頃、毎晩のように飲みにきていたと聞いています。

この曲はGT’ズでセッションしている時に、そいつがイントロのコードを持ってきて弾き始めて、それに乗っかって自分が作っていた曲を演奏したんです。“VINYL FREAK”はその曲を発展させて作った曲だったので、ヤツの店のことを歌おうと思ったんです。店で朝まで過ごしている時の気持ちを日記のように歌った曲で、三茶の駅から歌詞通りに行けば店に着くと思います(笑)」

 

一人で進んで行けそうな道が見えた

――歌詞にはキハラさんのそういった日常や日々の想いが綴られていて、サウンドは多彩でポップですけどシンガーソングライター的なアルバムでもありますよね。

「ジャック達というバンドに対する思いも含めて、自分のなかに書きたかったひとつの物語があって。それを自分のことを大事に思ってくれている友達に届けたかったんです。

それで完成したアルバムを、聴いてほしい人たちに頼まれもしないのに送りつけたんですけど(笑)、好意的な感想を伝えてくださる方が多くて涙が出るほど嬉しいです。ジョージ・ハリスン『All Things Must Pass』みたいな執念を感じた、と言ってくれた人もいたけど(笑)」

――長年在籍したバンドからの脱退という痛みから、人の心を動かす作品が生まれた。かつてマーヴィン・ゲイは離婚の苦しみから『離婚伝説』というスウィートな名作を作りましたが、それが創作のすごいところですね。

「ありがとうございます! さっきも言いましたけど、BGMにもなるし、真面目に聴いたら発見もある。自分が好きなアルバムはそういうものでした。自分のアルバムがそういう作品になっていると言ってくださる人が数人いるだけで、大変だったけど作って良かった、と思いました。

このアルバムを作ったことで一人でも進んで行けそうな道が見えたので、今はもうちょっと音楽を続けていきたいと思っています」

 


RELEASE INFORMATION

宙キハラ 『GYRO, What’s The Frequency?』 GO→ST(2025)

リリース日:2025年1月15日(水)
品番:INPH-018
仕様:CD
価格: 3,300円(税込)

TRACKLIST
1. 三日月の夜
2. JUST A TWO OF
3. ノート
4. 渚にて
5. ひとつくらい
6. VINYL FREAK
7. アゼトウナ
8. Syndrome
9. そう思えば
10. 諦念
11. 他人事
12. 塵
13. 昨日今日明日
14. そう思えば-reprise-
15. 誰も知らない
16. Painted BLACK

Produced by 宙キハラ