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NAOKI

クソ楽しかったね

 歌詞の主役がTAISHOならば、作曲、編曲、演奏はNAOKIの独壇場だ。デモを元に相棒のエンジニアと二人でリズムを組むところから始め、延べ80時間のスタジオ作業で作り上げたサウンドは一人多重録音ならではの緻密さ、アコースティック・ギターを軸にしたグルーヴ、ローファイな音像の迫力が見事に合致している。一部の曲にはSAで共に戦うKEN(ベース)とANNY(ドラムス)も友情参加して、曲調もグラム・ロック、ロカビリー、バラード、フォーク、ソウル、ロックンロールなど、音楽家・NAOKIの集大成と言っていいほど多種多彩だ。

「今日もまるまる一周聴いたけど、飽きひんね。痒いところに手が届くアレンジやなって、自画自賛(笑)。パンク・ロックをずっとやってきて、そういうイメージを持たれてるかもしれないけど、もともと音楽の好き嫌いはなくて、いろんな曲を作るのが好きだから。子どもの時からメジャーセブンスだのフラットファイブだのをよく知ってたんで、コードもけっこう難しいのを使ってますよ。“THE GOOD OLD DAYS”は、モット・ザ・フープルの“Honaloochie Boogie”みたいな感じで作ろうと思って、ちょっと切ないコードを入れてみたり、“シャンパングラスとバージニア”のコーラスとかは、レコードバーでシャネルズをかけて研究したり。“光も影も瞬くこの日も”の最後に転調して終わるところも、すごいお洒落でしょ? 元のキーのままだと希望が見えないから、転調して未来に行くイメージにしたかったんですよね。“SING ALONG FOREVER”で3拍子から4拍子に行くのは列車が加速していくイメージで、SEの入れ方にもこだわったし、最後はナインスで終わるからグッと広がりが出る。そういうことを考えるの、好きなんですよ。全部自分で答えを探さなあかんかったからしんどかったけど、クソ楽しかったね」。

 6月18日、アルバムのリリース日はNAOKIの60歳のバースデー。「俺の音楽人生はもうそんなには長くないよ」と言いながら、大病の後に現在も残る頭の痛みなどの後遺症を笑い飛ばし、どんなにシリアスな話題でもユーモアを絶やさない。その言葉と態度と音楽が完璧に一致していることに、つられて笑いながらも心の奥が揺さぶられるような感動を覚える。このアルバムは宮本ブラザーズの音楽人生を祝福する奇跡の瞬間を記録したものであると同時に、二人の音楽を愛する長年のファンへの特別な贈り物だ。

 「みんなも人生の経験でたくさんのことを味わってきただろうから、このアルバムの歌詞の世界観はわかるはずだし、若かったあの頃を思い出したいなということも、いまの苦しいことも、本当にさまざまなシチュエーションが描かれているからね。しかもそれを書いた奴が寝たきりで、言葉もロクにしゃべれなくて……このジャケット写真もベッドの上で撮ってるから。もう全部、ありのままで行きたかったんですよ。そして始まりはこの裏ジャケ(兄弟の少年時代のツーショット)で、飲み屋でこの写真を見せたら、同世代ぐらいの人らに〈この写真だけで泣ける〉って言われましたよ。この年になると、家族が疎遠になったり、亡くなったりとか、いろんな人がいるじゃないですか。アルバム・タイトルは3日考えたけど、仲のいい兄弟がこんな年になってもがんばっていて、こういう作品を作れるというのは奇跡だし、『SPECIAL MOMENTS』しかないと思いましたね。本当に特別な瞬間たちが詰まったアルバムになったんじゃないかな」。