
実験性とポップス性の両立
――ところで、近年の音楽消費はグループや個人のファンとアーティストの距離が非常に近い推し活が主流だという印象で、〈音楽を好きな人が色々なものを聴いていく〉という姿勢は少数派になってきたような感覚があるんです。そんななかIRORIから発表される作品は、音楽が好きな音楽ファンに広く向けられたもので、連綿と続くポップミュージックの歴史の最先端にいると感じるんですよね。
「特に意識はしていませんが、光栄です。いい音楽を作っているアーティストを見つけてリリースすることが最大の仕事なので、才能あるアーティストを見つけた時点で僕らの仕事はほぼ終わりなんじゃないかと思うんです。
ただ、僕らは市民権をすでに得ているジャンルよりも今のシーンにない音楽にワクワクするタイプなので、それを新しいスタンダードにしたい、日本のなかに新たなシーンを切り拓きたい、という野心は持っています」
――リスナーのターゲットについては考えますか? たとえば、先ほど言った〈音楽好きなリスナー〉など。
「音楽好きを裏切る作品は出したくないと考えてはいますが、それだけだとそこで終わってしまうので、風穴を開けて、もっと外にいる人たちに〈これが素晴らしい音楽なんだ〉と伝えたいんですよね。なので、それがIRORIのアーティストが持っているそれぞれのポップス性に跳ね返っているのかもしれません。もしそこを意識しなかったら、まったくポップスをやらなくなるアーティストも何組かいると思います(笑)」
――IRORIのいちファンとして、アーティストの魅力的なラインナップやリリースされる優れた作品の数々をチェックしていて、守谷さんの才覚や嗅覚を感じるとともに、A&Rなど優秀なスタッフの方がたくさんいるのでは、と勝手に妄想しているんです。スタッフのみなさんはどんな方々ですか?
「みんなアーティストへの愛が強いですし、とても優秀で多彩なスタッフたちだと思いますね。
IRORIは所属している多くのアーティストの音楽に関係するほとんどのことに関わっているので、〈レーベルの人〉〈プロダクションの人〉といった分け方をしていないのが特徴なんです。全員が制作のことをわかっているし、宣伝のこともプロダクションのこともわかっている特殊な組織なので、それがスタッフの色にもなっているのかなと。スタッフが〈ここからここまでが僕の仕事で、ここから先はそうじゃない〉なんて言うことは極めて少ないんですね。アーティストがツアーをやれば全国どこのライブ会場にも一緒について行きますし。そういう意味で、インディーズっぽいメジャーレーベルなのかもしれませんね」
――失礼な言い方かもしれませんが、IRORIは非常にいい意味で〈メジャー内インディー〉だと感じていました。
「そもそもキャニオンがメジャー内インディーですし、そうなるとIRORIは〈メジャー内インディー・インディー〉なのかもしれません(笑)」