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ⒸBig Brother Recordings 

カーディフ公演よりも仕上がっていたオアシスのライブ

さあ、“Fuckin’ In The Bushes”でメンバーそれぞれが定位置に着いた。待ちに待った “Hello”だ。〈Hello, hello, it’s good to be back, it’s good to be back〉と歌われるたびに、ここ日本とオアシスとの長く濃厚で楽しい歴史が際限なく脳裏に去来する。昔からのファンの皆さんは、きっと誰もが〈おかえり!〉と心の中で叫んでいたことだろう。曲が終わると、リアムは〈アリガト!〉と日本語で会場に呼びかけた。そして “Acquiesce”の後には、リアムは食べていたタンバリンを優しく会場に投げ入れる。

そして 〈ここってマジでいい感じのドームだよな〉と彼が語った後、ヘリコプターの音が流れてきてゲム・アーチャーがおもむろに弾き始めたのは“Morning Glory”のイントロ! 一方で、この曲のギターソロやアウトロの部分はノエルが気持ちよさそうに演奏していた。5曲目は“Some Might Sa”、リアムの歌声が絶好調だ。調子がいいことも影響してか、この曲でリアムは会場に向けて投げキッスをし、曲の終わりには片腕で心臓を叩きながら〈アリガト!〉と声をかけるなど、ロックンロールスター健在の堂々とした立ち居振る舞いがいい。

そうなのだ、この5曲目あたりで予感が確信に変わったのだが、なんとオアシスのライブ自体が私がカーディフで見た3ヶ月半前よりパワーアップしているのだ! さらに仕上がっている、という言葉の方が正確かもしれない。カーディフで見た際、自分でも疑心暗鬼ながら〈もしかしたらこれは私が人生で見た中で最もいいオアシスライブかもしれない〉と感じた。現役時のオアシスのライブは、時に波があり(たいていリアムの気分と、それに伴うアニキのモードが理由)、プレイリストの精度が期待とは違うなど、好きなライブの記憶は数多くあるものの〈これぞ完璧〉と呼べるものはなかったように思う。

ⒸBig Brother Recordings

だが、今回の再結成ツアーはそもそもセットリストが最強だ。そのセットリストを固定してツアーを回り、取材を全く受けず、都市を移動する場合は十分に時間をとっている。その配慮こそ、今回の再結成ツアーを成功に導いた秘訣だ。つまり、同じセットリストでライブを重ね、それぞれの土地に行くたび待っていた(もしくは初めて彼らのライブを体験する)ファンの顔を目にすることで、プロ中のプロであるメンバーたちの演奏はより良くなっていくしかない。年齢を重ねると、若い頃とは注意力のあり方が違ってくる。一点集中で同じセットリストを続けるのは、本当に良い判断だったと思う。

 

リアムが醸し出す〈絶対にこのライブをいいものにする〉という覚悟

一方で演奏者とは異なり、ライブを重ねるごとに喉を酷使するのがボーカリスト。ソロ活動を始めてからは体調管理などにも気を遣うようになったリアムではあるものの、喉の調子がツアーを重ねてこれほど上り調子になっていくのは、まさしく管理の賜物だろう。また、続く“Bring It On Down”では改めて、リアムの歌う際の体勢がいかに完璧なものであるかに感銘を受けた。アニキが作った曲に、魂を込める声を発するための最高の姿勢。それゆえに、再結成ツアーのライブ会場がどこも特別な空間になり、皆が満足して帰っていく。

そして驚くことに、再結成オアシスではリアムの存在感そのものがとても頼もしい。昔のオアシスでも彼の予測不能なヤンチャさと不思議な虚無感は魅力であり、しかし場合によっては弱点にもなった。その後、ビーディ・アイやソロで16年間バンドの中心としての責任を果たしてきた経験と、再結成オアシスでは隣に兄がいる安心感とが双輪となって、リアムのフロントマン感が他に類をみないものになった。

ⒸBig Brother Recordings

そもそも、今のリアムが醸し出す〈絶対にこのライブをいいものにする〉という覚悟は、彼が野生の人であることを考えると、昔のオアシス時代にはあまりなかったように思う。一方で、予測不能な危うさもまた、彼を形作る素晴らしい要素としてちゃんと残っていることを東京ドームでしばしば目にした。

たとえばこの夜、マイクから離れて自分の喉の辺りを手で叩き、袖かどこかのスタッフに合図をする姿が2、3回見られた。音響の調子が悪いのか(そんな風には感じなかったが)、他に気になることがあるのか(たとえば今回のツアーで初のアリーナ座席の会場のため、人々が前方に押し寄せてきた他会場とは雰囲気が異なる)、リアムにしかわからない何かが起こっているようでドキドキした。

また、アンコールのノエル編が終わった後にリアムがステージに出てくるまで少し時間がかかった(この時〈お前、何やってたんだ〉と言いながらアニキが会場にリアムを紹介するという素敵なハプニングも)。この、バンドも自分も破格の成長を遂げつつ、一方で今も予測不能なリアムのあり方こそが、再結成オアシスを予定調和にしない大きな理由だろう。予定調和で予測できるオアシスではなく、見ているとドキドキするオアシス。全世界の俺たちのキッズたちに、俺たちの名曲を届けにきたオアシス。素晴らしいライブにならないわけがない。