再結成を果たしたオアシスの来日公演が10月25日と26日の2日間、東京ドームにて開催された。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとおとぼけビ~バ~が各日のスペシャルゲストとして登場し、2日間で10万人以上のオーディエンスが熱狂した。ノエル・ギャラガー、リアム・ギャラガーらが名曲の数々を届けた来日公演より、ドーム初日の模様を収めた妹沢奈美による公式レポートが到着した。 *Mikiki編集部
この祝祭感がフェイクかどうか確認したかった
祝祭空間、ついに日本上陸だ。7月4日に英カーディフで幕を開けたオアシスの再結成ワールドツアーが、とうとう日本にやってきた。10月25日、東京ドーム。数日前から東京は急に寒くなり上着が必要になっただけなく、この日は冷たい雨がしとしと降っていた。ライブの帰り道にSNSを開くと、傘を刺しながら東京ドームの外でオアシスのライブを味わう大勢の皆さんの映像や写真が掲載されていた。今回は東京公演のみ、かつ抽選のため、それぞれの事情で来場できなかった人も多いだろう。そういう方たちに、ちゃんと本ライブ評が届けばと願いながら書いている。オアシスがオアシス自身を更新した非の打ち所のないライブだったことが、伝わればと思う。
予定されていた18:30ちょうど、今回の全てのツアーの幕開けに使われているスピードメーターの映像と、〈This is not a drill(これは訓練ではない)〉の文字が映し出される。ついに、その時がきた! SEとして使用される“Fuckin’ In The Bushes”が流れ始め、ギャラガー兄弟が出てくるのはもうすぐ。海外のライブの模様を見ていると、手を繋いで出てきて互いにハグをするのがこの3ヶ月半で定番になっているのが気になった。この日、筆者は幸いにもVIPチケットが取れかなり前方で見ている。つまり、私が最初にやることはただ一つ。その手繋ぎとハグの際に漂うギャラガー兄弟の温度感の確認だ。
思えば、再結成が実際にスタートしてからこのかた、SNSや各国のライブレポートをチェックしても、実際にライブを見た人が否定的なコメントや文章を記載しているのを見たことがない。私もカーディフでのツアー初日と2日目を目撃し感動したが、あれから3ヶ月半も経っている。そもそも『Don’t Believe The Truth』というタイトルのアルバムをオアシスは出している。〈事実〉、とされているものを信じるな――今のギャラガー兄弟の気分とバンドの演奏と、この祝祭感がフェイクかどうか、我々の判断力が麻痺していないかは、東京公演で改めて自分自身の耳と目で確認したいと思っていた。
アジカンのステージから素晴らしい夜になると確信できた
さあ、会場からの拍手と歓声が最高潮になりリアムがステージに登場! 右手にマラカス、そして左手には兄ノエルの右手を繋いで高く掲げて歩いている。ノエル自身は両手を上げ、その表情に目を映すと、笑顔だ。混じりっ気のない、純粋な喜びの笑顔。肉眼ではっきり目撃し、こちらまで嬉しくなる。そしてリアムはマラカスをパッと落とし、両手でアニキを抱きしめた。実感する――フェイクなんてとんでもない、見せかけの仲の良さでもない。このハグは、〈よし、やるぞ〉という兄弟たちの気合い注入の儀式だ。この夜が素晴らしいものになる予感のみ、そこにはあった。
実際のところ、この日の会場の期待値はオアシス登場前から最高潮に高まっていた。なにしろ、オープニングアクトのASIAN KUNG-FU GENERATIONがとても良かった。重低音を丁寧に響かせつつギターや歌声が予想以上にきれいに聞こえる彼らの今のライブサウンドに、東京ドームだろうと今回のオアシスの出音はきっと大丈夫と安心させてもらった。
前に後藤(正文)さんに、彼がいかにオアシスと出会い人生が変わったか、の話を聞かせてもらったことがある。この日の彼のMCの〈オアシスと初めて出会って30年、名古屋でオープニングアクトをしてから20年〉や〈どうか皆さんも素敵な夜にしてください、ありがとう〉という言葉の温かさは、そこに嘘がないからだ。喜多(建介)さんや伊地知(潔)さん、山田(貴洋)さんも全員が横並びのステージで、こちらが嬉しくなるほど笑顔で楽しそうに演奏していた。大学で出会ったこの4人。原点回帰を思わせるすっきりした演奏と歌声は、会場の空気をこの時点でとても清々しいものにしてくれた。
アジカンからのステージ転換時、ボーンヘッドのバストアップの写真が目を引いた。普段なら彼の定位置であるノエルとリアムの間の場所にちゃんといて、いつものように場を和ませてくれる。今回のAPACツアーへの欠席の理由として前立腺がんの治療中であることを公表したボーンヘッド。快癒を祈りつつ、再結成という形で皆で再び音を鳴らせた事実が、そもそも奇跡的なのだと改めて感じ入る。