清涼飲料水のイメージ・ソング・コンテストで審査員の玉井健二agehasprings)らの賞賛を受けて優勝。これがきっかけで本格的に活動をスタート&メジャー契約を果たし、その3か月後の2012年6月には初のミニ・アルバム『pacolate』をリリース……という飛び級的な躍進でJ-Popシーンに登場したのが、楽曲制作を担うShinpeiとシンガーのaacoによるポップ・デュオ、pacoだ。その音楽性は、aacoがグループを語る際に挙げた〈MAKE HAPPY〉というキーワードが何よりも明快に示している。とにかく軽快でキャッチーでポジティヴ。かつ、ルーキーらしからぬ洗練をもモノにしているのが恐ろしい。

  「音楽的には〈キラキラポップなメロメロチューン〉をめざしていて。とにかく耳当たりが良く新鮮なメロとアレンジを心掛けつつ、その時その時の思い付きを活かすようにしたらpacoらしい音楽性が出来上がった気がします。〈自由にやってんなー〉って笑われるような音楽ってことですかね」(Shinpei)。

paco パコラボレーション EARTH, WIND & FIRE GREATEST HITS COVER rhythm zone(2014)

 そんな彼らの新たなマテリアルが、このたび届けられた『パコラボレーション EARTH, WIND & FIRE GREATEST HITS COVER』だ。本作はタイトルが示す通り、ポップ・シーンに君臨するソウル/ファンク・レジェンド、アース・ウィンド&ファイアのベスト盤『The Best Of Earth, Wind & Fire Vol. 1』(の99年版)をまるごとカヴァーしたもの。クラシック中のクラシックの数々を、pacoならではのセンスでカラフルに染め上げている。

  「今回は、誰もが知っているアーティストの楽曲をカヴァーすることによって、pacoの強みであるShinpei君のアレンジ能力の高さをしっかり表現できるなって思ったんです」(aaco)。

 冒頭を飾る“September”“Boogie Wonderland”の2曲はエレクトロニックなダンス・トラックに昇華。EW&Fを特徴付けるホーン・セクションは意図的に封じたという絶妙なアレンジの采配や、どこまでもキュートなaacoの歌声が、原曲の根幹にあるファンクネスとしなやかなポップネスを結び付けている。

  「正直〈このメロディーはどうしてここにいくんだろう?〉とか〈ここのフェイクはどうなってるの?〉って、ファンクの独特な歌い回しが身体に馴染むのに時間がかかったんですけど、馴染んでくると自然に口ずさめちゃうのがEW&Fの凄さなんだなって。やっぱりポップな要素がふんだんに盛り込まれているからあれだけ長く多くの人に愛されているんだと思ったし、だからこそ私たちらしいJ-Popに仕上がったんじゃないかと思います」(aaco)。

 躍動感たっぷりのミディアム“Reasons”、ボッサに仕立てられた“That's The Way Of The World”、ロック・テイストとモータウン調のビートが楽しい“Love Music”、流麗なハウス“Sing A Song”……原曲から大きく飛躍した解釈が多くを占めているのに驚かされるし、唸らされる。そもそもEW&F自体がクロスオーヴァーな音楽性を持ったグループなわけで、その雑食性とpacoの多彩な音楽性とが合致したところもあるのだろう。

  「今回は、歌い手の違いによるニュアンスの差はあるものの、メロディーはできる限り触っていません。その曲を変えずにpaco色に染めること、いちばんこだわったポイントはそこです。大好きな曲たちなので、曲を崩さないよう細心の注意を払って遊びました」(Shinpei)。

 定番ナンバーに新たなイメージを吹き込むというトライアルを成し遂げたことについては、「pacoを一度丸裸にしてまた新しく建設し直した感じでした」(aaco)、「もともとが名曲ばかりなので賛否両論あると思いますけど、それらを全部吸収して何十倍にも膨らませて新たに音楽を作っていきたいと思います」(Shinpei)と語る。本作を経た彼らが、これからどんなオリジナル楽曲を作り上げていくのかにも大いに期待したいところだ。