©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

NYで愛されてきた一大ジャズ・イヴェントが日本に再上陸! 昨年に引き続き2度目の開催となる〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2016〉(以下〈BNJF〉)が、9月17日(土)に神奈川・横浜赤レンガ野外特設ステージで開催される。初開催となった昨年も大いに盛り上がった〈BNJF〉だが、今年もアース・ウインド&ファイアを筆頭に、ジョージ・ベンソンマーカス・ミラーといった大御所から、女性シンガーのアンドラ・デイにUKピアノ・トリオのゴーゴー・ペンギンといった新世代の才能までが集結。さらに、日本を代表するディーヴァの一人であるMISIAが、NYで活躍するトランペッターの黒田卓也率いるバンドと共演を果たす。

Mikikiでは、今年も〈BNJF〉の総力特集をお届け。この第1回ではイントロダクションとして昨年の模様を振り返りつつ、今年のラインナップを紹介! 〈BNJF〉に行けば特別な体験ができる3つの理由を徹底解説する。これを読めばフェスの魅力が掴めるはずだ。

★フェスの詳細はこちら

 

1. 都市型フェスのノウハウを継承した、素晴らしいロケーション 

まずはフェスの成り立ちをおさらいしよう。〈BNJF〉のロール・モデルとなっているのは、NYの老舗ジャズ・クラブであるブルーノート(日本のブルーノート東京の姉妹店)が主催し、2011年にスタートした〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉。〈ジャズ〉という名のもとに、世代/ジャンルをクロスオーヴァーした出演陣が集められ、6回目を迎えた2016年はロバート・グラスパー・エクスペリメントカマシ・ワシントンアル・ジャロウジョシュア・レッドマンビラルタリブ・クウェリマイケル・フランクスといった面々が、1か月間に渡ってNYを熱く盛り上げた。

※〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉の歴史については、昨年掲載したこちらの記事に詳しい。

©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

そういった都市型フェスのノウハウを継承した〈BNJF〉は、1日限りの野外フェスとして開催される。会場に選ばれたのは、日本ジャズ発祥の地とも言われる横浜の港町。会場となる赤レンガ倉庫の野外特設ステージは、馬車道駅or日本大通り駅(共にみなとみらい線)より徒歩約6分の好立地で、都心から1時間足らずで到着できる。赤レンガ倉庫といえば、レトロな街並みで知られる観光名所。移動中の道のりも風情があって、心が弾む。

©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

そこから会場へ辿り着くと、目の前に大さん橋、その向こうにベイブリッジを臨む、贅沢な光景に魅了されるはず。日中は透き通った青空と海に囲まれて、開放感に満ちたムードを堪能することができるし、夜になればライトアップも美しく、ロマンティックなひと時を演出してくれる。初秋の開催ということで熱さもひと段落しており、野外で快適に楽しむことができるのも嬉しい。

〈BIRD STAGE〉(上)と〈DIZ STAGE〉(下)
©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

さらに、オーディエンスへの配慮が行き届いた会場作りにも注目しておきたい。昨年同様に2つのステージが用意されており、メイン・ステージである〈BIRD STAGE〉の前方には2種類の指定席が並び、もう一方の〈DIZ STAGE〉は開放感のあるスタンディング・エリアで演奏が繰り広げられる。この両ステージは距離が近いうえに、タイムテーブルの被りもないので、各アクトの演奏を余すことなく楽しむことができる。椅子席でじっくり聴き入るも良し、パーティー気分で盛り上がるも良し。上質な音楽を心ゆくまで味わってほしい。

 

ロバート・グラスパー・トリオ
©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

2. 昨年のラインナップに窺える、志の高い運営理念

初開催となった昨年の〈BNJF〉で印象的だったのは、若い観客の姿がとにかく目立ったこと。これは一時期の停滞を経て、ジャズが近年大きなムーヴメントとして盛り上がりを見せているなか、〈BNJF〉が時代の声に応えてみせた何よりの証拠だと思う。それはつまり、出演者のブッキングが絶妙だったことを意味している。

スナーキー・パピー
©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

ハイエイタス・カイヨーテ
©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

パット・メセニージェフ・ベックといった重鎮たちや、日本でも人気の高いインコグニートを中心に据える一方で、新世代ジャズの旗手であるロバート・グラスパー・トリオに加えて、旬の2組であるスナーキー・パピーハイエイタス・カイヨーテを大抜擢。歴史を培ってきたビッグネームから、明日を担うライジング・スターまで揃えたラインナップには、ジャズの伝統を背負いつつ、革新を切り拓こうとする決意も窺えた。

グラスパーのライヴに、パット・メセニーが飛び入り参加
©Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

 

実際に、スナーキー・パピーとハイエイタス・カイヨーテは、このときのパフォーマンスによって、日本でも一気に人気バンドの座へと登り詰めている。さらに、ヴェテランたちのステージングは、古参のジャズ・ファンを喜ばせただけでなく、若い観客がジャズの歴史に興味を抱くきっかけにも繋がっただろう。まさかの実現となった、グラスパーとパット・メセニーの共演が何よりも象徴的だ。

〈BNJF〉は時代の動きを察知しつつ、新しいジャズ・フェスの在り方を提示することで、現代ジャズ・ムーヴメントのさらなる起爆剤になると同時に、ジャズが長い歴史をかけて育んできたカルチャーとコミュニケーションを、日本にもう一度根付かせようとしている。