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優等生は脱いでいけ!

 そこから一転、ダウナーなポエトリーを乗せたダンス・ロック“コバンザメの憂鬱”は作曲を田淵智也、編曲を川口圭太、作詞を本人が手掛けたもの。反骨精神満載の〈コバンザメ〉の奮闘がブラック・コメディーの如く描かれている。

 「田淵さんのトリッキーなメロディーに対して編曲で日和りたくない、全力で挑みたいって気持ちがあったし、圭太さんならさらに変なことをしてくれるだろうなって。歌詞はここ数か月の間に考えたことを反映させたものです。10代の子にも夏川の音楽を知ってもらえるよう最近TikTokを始めて、ダンスの真似っこだったりをがんばってやってるんですけど、SNSから逃げてきた人生だったので全然向いてない(笑)。でも、ここで闘志を見せないと世界が開いていかないからやるしかない、だけどやっぱり憂鬱ではあるっていうギャップを吐き出さずにはいられず(笑)、その場としてこの曲はとんでもなくピッタリでした。でも、叶えたい夢に向かってこういう葛藤を抱えながらがんばってる人って、たくさんいるんじゃないかな」。

 ロブ・ゾンビの夏川版とでも言うべき“労働奉音”から雪崩れ込むのは長谷川大介(Aqua Timez)製の “Silhouette”。挑発的なヘヴィネスで迫るサウンドに夏川が当てた言葉は……体重計に乗る恐怖だ。

 「映画かよ、みたいに不穏なイントロからむちゃくちゃヘヴィーな曲で、超カッコいいね!となりました。でも、そのままの方向性で歌うのもおもしろみがないってことで、考えた結果がこれ(笑)。ダイエット・プランのところとか、洋楽歌手のつもりでかなりカッコつけて歌ってます(笑)」。

 〈引き〉の視点で新たな表現に挑戦した“「 later 」”からバトンを受け取るのは、今回が初顔合わせとなるレイラが提供したウィーザー風のオルタナ・チューン“As You Know”と、浅利進吾 × 川崎智哉という常連組によるファニーなメタルコア“SCORE CRACKER”。とことん硬派に、そしてキャッチーにエンディングまで駆け抜けていく。

 「私の音楽ディレクターがラジオで聴いて、教えてくれたことがレイラとの出会い。あのオルタナ感が好きなので、基本的にはお任せでした。演奏もレイラさんなんですけど、有明さんの仮歌が本当にカッコよくて、ブレスの位置とかニュアンスを参考にさせてもらいました。“SCORE CRACKER”は最初もっと電子音が多めで、どちらかいうと電波ソングに近い雰囲気だったんですけど、メロディーがすごく良くて。表題曲に選んだ段階で、他の曲と馴染むラウドな方向へ変えていった感じです。この曲を聴けば『CRACK and FLAP』に込めた意味がわかるんじゃないかな。いちばん最後の〈優等生を脱いでいけ!〉って言葉を言いたかったから今作を作ったように思います」。

 “シャドウボクサー”から始まった『CRACK and FLAP』までの道程。同曲には〈世界の引く 縦線 横線 は殴っちゃえ!〉というフレーズがあるが、それはつまり“SCORE CRACKER”における〈優等生を脱いでいく〉ということ。夏川が2年3か月にわたって伝えてきたメッセージが一本筋の通っているものだったことを示す――『CRACK and FLAP』とはそんなアルバムだ。

 「“シャドウボクサー”を作ってライヴで歌い切ったとき、〈これは誰かの真似だったり、焼き増しだったりじゃない。夏川椎菜にしか歌えない歌詞だし、曲だし、できないパフォーマンスだ〉っていう実感を得ることができたんです。今回のアルバムで言うと“シャドウボクサー”と“SCORE CRACKER”がやっぱりコアで、何かの壁だったり、困難みたいなものにぶつかったときに、正統派で真っ直ぐぶつかるのもいいけど、回り道したっていいし、その解決方法のおもしろさを楽しんでもいい。いろんな殻の破り方と羽ばたき方があるよねってことを伝えたい――このアルバム『CRACK and FLAP』の制作中に常にあったのはそういう想いでした。〈これが自分のやりたいこと、この先の展開へと繋がっていく音楽なんだ〉と確認できたのは大きかったです」。 *土田真弓

夏川椎菜のEPやシングルを一部紹介。
左から、2025年のEP『Ep04』、2024年の“「 later 」”“シャドウボクサー”(すべてMusicRay'n)

夏川椎菜のアルバム。
左から、2023年作『ケーブルサラダ』、2022年作『コンポジット』、2019年作『ログライン』(すべてMusicRay'n)

『CRACK and FLAP』に参加したアーティストの作品。
左から、田淵智也の2025年作『田淵智也』(トイズファクトリー)、Aqua Timezの2025年作『海いっぱいに降りしきる星』(エピック)、レイラの2024年のEP『つづく』(レイラ)

夏川椎菜の作品や参加作を一部紹介。
左から、2025年のライヴ映像作品「Revenge Live “re-2nd”」(MusicRay'n)、TrySailのベスト盤『BestSail』(SACRA MUSIC)、メインキャストを務めた2025年のアニメ「卓球少女 -閃光のかなたへ-」(アニプレックス)