今年ソロデビュー45周年を迎える原 由子が、その節目を祝うアニバーサリーライブ〈伊右衛門 presents 原 由子 45th Anniversary Live「京都・鎌倉物語 2026」〉を開催した。ここでは、全国各地の映画館でライブビューイングも行われた神奈川・鎌倉芸術館 大ホールでの最終公演の模様を綴ったオフィシャルレポートをお届けする。 *Mikiki編集部
春の鎌倉に響きわたる恋の歌
4月7日、春の訪れを告げる心地よい風が古都・鎌倉の木々を揺らすなか、ツアー最終公演の開演を待つ観客の期待は最高潮に達していた。18時30分、照明が落ちるとバンドメンバーが静かにステージへ。斎藤誠(ギター)、中シゲヲ(ギター)、山内薫(ベース)、片山敦夫(キーボード)、山本拓夫(サックス)、TIGER(コーラス)、金原千恵子(バイオリン)――サザンオールスターズや桑田佳祐ソロのステージでもおなじみの名うてのミュージシャンたちに加え、ドラムの椅子にはサザンオールスターズから松田 弘が座る。その豪華な顔ぶれに会場が沸き立つなか、SEが鳴り始めると歓声がひと際大きくなり、原 由子がゆっくりとステージに姿を現した。割れんばかりの拍手に包まれながら、つつましく穏やかな笑顔で一礼し、スッとキーボードの前に座る。その佇まいそのものが、すでに原 由子という音楽家の器を物語っている。
キャッチーなシンセサイザーの音色とともに幕を開けた1曲目は“あじさいのうた”(1987年)。雨降る季節にも心を明るく照らしてくれる原 由子ソロの代表曲だ。ステージ上部から紫陽花に見立てて吊り下げられたカラフルな和傘たちが、この曲の世界観を鮮やかに体現する。観客の手拍子が雨音のように弾け、甘酸っぱい恋の記憶が一気に蘇る。松田 弘が刻む太く芯のあるドラムに自然と笑みがこぼれ、初夏の予感とともに45年の旅への扉が軽やかに開いた。続く“春待ちロマン”(1988年)ではスクリーンに青空が広がり、爽やかな歌声とともに春の情景がホール全体を満たした。
MCを挟み、原は足を運んでくれた観客への感謝と共に、45年もの間活動を続けてこられたことに触れ、「今日は年齢のことは忘れて、恋の歌をたくさん唄いたいと思います」と宣言。金原の伸びやかなバイオリンの音色からスタートしたのは“恋の歌を唄いましょう”(1996年)だ。瑞々しい恋心を軽やかに描いたこの1曲で、会場の空気は一変する。原のボーカルが艶を増し、バンドのグルーヴが一体となって客席を包み込んだ。続く“シャボン”(1984年)では歌い出すやいなや歓声が起き、夜の湘南の空気が漂う大人の恋の翳りを照明が静かに演出した。
続くMCでは「サザンが6月で48周年になりますが、ここまで続けられるなんて自分でも思っていなかった。本当に皆さんのおかげです、ありがとうございます」と深々と頭を下げると、自身が今年60代最後の歳であることに触れ、2月に古希を迎えた桑田佳祐が発した〈コキまくって〉という言葉を引き合いに出して笑いを誘いつつ、温かくユーモア混じりに語った。