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大胆な変化による音楽性の拡張

 そのようにイーグルスが〈スーパー〉な存在である理由、その問いにひとつの明確な答えを提示してくれる作品がある。彼らが75年に発表した通算4作目『One Of These Nights』だ。今回リリースされる〈デラックス・エディション〉は、その本質を改めて浮かび上がらせる格好の機会と言えるだろう。ひとつのバンドに複数の主役級ミュージシャンが揃い、それぞれの個性がせめぎ合いながら最終的にひとつの完成形へと収斂していく。そんな理想的なダイナミズムを鮮やかに体現している本作は、緻密に構築されたアンサンブル、そして洗練美と普遍性が見事に共存する楽曲群などの要素が有機的に結びついており、彼らに初の全米No. 1ヒットをもたらした記念碑であると同時に、スーパー・バンドたるゆえんを決定づけた一枚でもあるのだ。

EAGLES 『One Of These Nights (Deluxe Edition)』 Asylum/Rhino/ワーナー(2026)

 そもそもイーグルスは、アメリカ的叙情を描くことを得意とするルーツ・ロック色の濃いグループとして出発した。71年にリンダ・ロンシュタットのバック・バンドとして集ったメンバーを母体に始動し、LAのカントリー・ロック・シーンに新たな風を吹き込む存在となったわけだが、3作目『On The Border』あたりからロック色を強め、次第にハードで煌びやかなサウンドを打ち出すようになっていく。その流れを決定的なものとしたのが、前作からタッグを組みはじめたプロデューサー、ビル・シムジクの存在である。彼が全曲プロデュースを手掛けた『One Of These Nights』においてイーグルスは、それまでの延長線にとどまらない大胆な変化を取り込みながらみずからの音楽性を大きく拡張していく。ロック、カントリー、さらにはソウルのエッセンスを自在に横断し、高次元で結びつけた試みが圧倒的な完成度として結実しているのだ。

 象徴的な1曲が、オープニングを飾る“One Of These Nights”だ。デトロイト育ちのフライのソウル志向を色濃く反映したこのナンバーはうねるようなベースライン、ヘンリーのファルセットなどが艶やかに響く、ディスコ・グルーヴを取り入れた意欲作で、それまでの清涼感あふれるコーラス・グループというイメージを更新し、新たなフェイズへの突入を告げる役割を担っている。退廃と欲望が交錯するLAのライフスタイルを描いた歌詞も含め、その世界観は後の“Hotel California”へと連なっていく重要な布石となっている。そして、本作の真価をさらに押し広げているのが充実したスロウ・ナンバー群だ。ランディ・マイズナー(ヴォーカル/ベース)がリード・ヴォーカルを務める“Take It To The Limit”は、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツの“If You Don’t Know Me By Now”から着想を得たアレンジが印象的で、壮大なストリングスをフィーチャーしてスケールの大きな情景を描き出した名演。さらに、フライとヘンリーのソウルフルな掛け合いが沁みる“After The Thrill Is Gone”、バーニー・リードン(ヴォーカル/ギター/バンジョー他)の穏やかな歌声が余韻を残す“I Wish You Peace”など、単体のアルバムで核になり得るほどの完成度を誇るバラードが揃っているのだからたまらない。そこに“Lyin’ Eyes”のようなカントリー・ロック路線の集大成とも言うべき名曲が加わることによって広がりと深みを兼ね備えた豊かな奥行きを獲得している。