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『セルレア』ではコンポーズも含めて一つの表現

――ライブではモチアンをはじめカバー曲も取り上げていましたが、今回のアルバム『セルレア』は全てオリジナル曲ですよね。オリジナル曲だけにしたのはなぜでしょうか?

「最終的にオリジナル曲で揃えたいという思いはもともとありました。今回のアコースティックカルテットではコンポーズも含めて一つの表現だろうなと考えて演っていたので。もちろんジャズスタンダードとかレジェンドが作った曲も好きですけどね」

――タイトル曲の“Coerulea”は、第1期カルテットの『Sector b』や昨年の初ソロ作『メタモルフォーゼ』にも収録されていました。ラテン語で〈青〉を意味する言葉を冠した曲ですが、この曲のイメージを中心にアルバムをまとめていったのでしょうか?

「いや、レコーディングの時は特に考えていなくて、出来上がってからその曲をタイトルに持ってきました。コンセプトを設けるというより、どれも自分が書いた曲なので、並べたら必然的に統一感が出るだろうなという感じで録っていきました」

――今回のメンバーであれば、全て完全即興でも高いクオリティになったのではないかと思います。そうではなくあくまでも楽曲を用意したのはなぜですか?

「完全即興のアルバムも作りたいですけどね。でもインプロビゼーションとコンポジションはどんどん近づけばいいなというのが僕の中では理想。即興演奏のアベレージを上げるために曲を作ってるところがあるんです。そういう心持ちでいると、演奏しながら曲がどう変化しても受け入れられるし、自由度が高まっていく。用意した曲たちを演奏していくうちに、最終的にそれが曲だったのか即興演奏だったのかわからなくなればいいなという理想を持っているので、そういう方向性で制作しました」

――収録曲はどれも譜面に書いて用意したのでしょうか? それともセッションの中で生まれた譜面のない曲も含まれていますか?

「今回はどれも書いています。実は意外と決めてるんです。即興っぽくなるところも〈ここで崩れる〉〈ここで戻ってくる〉みたいに指示していて、いわば台本がある演奏。ただ、方向性は決めているけど、その中の振れ幅とかは皆さんに任せました。地図を見ながら自由に行動するようなイメージです」

――今回のカルテットのために書いた曲はどれになりますか?

「2曲目の“Kichimu”と4曲目の“NIVA”、それと6曲目の“Noema”です。3曲目の“Augustus”はRS5pbでも演っているんですけど、だいぶアレンジを変えました」

――それぞれの楽曲について教えてください。“Kichimu”はどんなイメージで書いた曲でしょうか?

「言葉通り〈夢の中〉のようなイメージです。一つのテーマがあって、それをピアノとトランペットで行ったり来たりする曲なんですが、それがどんどん溶け合っていって、また違う展開が生まれてくる。それが夢の中というか、現実逃避的な感覚を生む。それで〈吉夢〉という曲名にしました」

――“NIVA”はいかがでしょうか?

「“NIVA”は村上龍の小説『コインロッカー・ベイビーズ』に出てくる登場人物の名前が由来です。あの小説、すごく好きなんですよね。〈カラギ島〉という架空の島も出てくるんですけど、そこから取って以前“Karagi”という曲を作ったこともありました。それはRS5pbの最初のアルバム『4 AM』(2013年)に収録しています」

――“Noema”は現象学の用語が由来ですか?

「そうです。ただ、後付けなので哲学的な意味を込めているわけではない(笑)。それより、今回収録している“Haoma”という曲と曲調が似ているので、語呂が近いこともあって曲名にしました。“Noema”はテーマだけ決めてあとは自由。最後にまた戻ってきましょうという曲なので、いわゆるフリージャズと構造的には一緒ですね」