現代ポップ・カルチャーのなかで
そんなフリートウッド・マックの黄金期の輝きを凝縮したベスト・アルバム『Greatest Hits』が、追加曲を収録した〈Deluxe Edition〉としてこのたび再登場を果たす。75年作『Fleetwood Mac』から87年作『Tango In The Night』までの6作品から生まれたヒットソングで構成されているオリジナル盤がリリースされた88年はちょうどバッキンガムが脱退した時期にあたる。そしてバンドはビリー・バーネットとリック・ヴィートゥという2人の新ギタリストを加えた6人組としてツアーを開始するタイミングにあり、ここで初登場となった新曲“As Long As You Follow”“No Questions Asked”が当時のセールス・ポイントとなっていた。しかし75年から87年までの驚異的な創造力を一望できる本作をいまとなっては単なるヒット曲集として片付けられないところがある。
TikTokをきっかけにふたたび世界的ヒットとなった“Dreams”(彼らの初の全米No. 1曲)をはじめとしてリアルタイム世代にはとても懐かしく、後追い世代にはやけに新鮮に響くその普遍性は、これらがただのクラシック・ロックではなく、現代のポップ・カルチャーのなかでいまなおイキイキと生命を燃やす音楽であることを物語っている。さらには、ロックやポップ・ミュージックが成熟を遂げ、人生そのものを歌う音楽へと変わっていった時代のもっとも美しい瞬間を封じ込めた盤であるとも言えるのではないか。なお今回追加された楽曲は、ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の最終話でふたたび脚光を浴びた“Landslide”、『Rumours』からのシングル“Go Your Own Way”のB面曲として収められていた“Silver Springs”のライヴ・ヴァージョンなど計6曲。新しいリスナーは、エモーショナルでときに渋みを感じさせるクリスティン、そして小悪魔的だけど時折ワイルドな表情も垣間見せるスティーヴィーのヴォーカルのテイストの違いを楽しんだりしてほしいし、とにかくファンタスティックなフリートウッド・マック体験が待っている、と言っておこう。
〈FOREVER YOUNG〉シリーズでリイシューされたフリートウッド・マックの作品。
左から、75年作『Fleetwood Mac』(Reprise/ワーナー)、77年作『Rumours』、79年作『Tusk』、80年のライヴ盤『Live』、82年作『Mirage』、87年作『Tango In The Night』、90年作『Behind The Mask』、95年作『Time』(すべてWarner Bros./ワーナー)、2003年作『Say You Will』(Reprise/ワーナー)。個々の作品については過去に掲載済みですので、バックナンバーもしくはMikikiに転載されている過去記事をご覧ください!
