マッシヴ・アタックとニーキャップが伝えたかったこと
今年はじめに北アイルランドはベルファストから初来日を果たし、その出自や音楽性も含め瞬く間に日本で広く認知されたニーキャップは、個人的にこの日見ておきたかったステージのひとつだ。GREEN STAGEに到着したときにはライブも後半に突入していたが、オーディエンスはほぼ総立ちでニーキャップの一挙手一投足を見つめていた。インダストリアルビートと切実な思いがこめられたラップを一方的に聴かせるのではなく、しっかりとエンタメの要素も加えながらリスナーに届ける。ニーキャップのパフィーマンスを見ていると、強制ではなく自発的に拳を掲げ、叫びたくなるのだ。


Photo by Taio Konishi
モグワイ、ジョーディ・グリープの熱演を少しだけチェックし、再びFIELD OF HEAVENへ向かう。ギターとベースのクン・ド・ポワトリーヌ、ドラムスのクレック・ド・ポワトリーヌからなるカナダはケベック発の覆面デュオ、アンジーヌ・ド・ポワトリーヌはフェスの開催前から大きな注目を集めていた。その注目度の高さを証明するように、FIELD OF HEAVENは今にも入場規制がかかりそうなほど人であふれかえっている。奇抜なビジュアル、コミカルな動きとやり取り、そして超絶技巧――様々な要素が絡みあってはいるが、ひとつひとつの要素を紐解いていくといたってシンプルなアーティストであることがわかる。

Photo by Ruriko Inagaki
夕闇のなか投下された1曲目の“Angor”から大きな歓声が上がる。ルーパーを用いて土台となるギターとベースの音を録り、そこから徐々に曲の骨格を作り上げていく。ステージ上にいるのは2人だが、曲が進むにつれて4人組のマスロックバンドのセッションを聴いているような気さえしてくる。時にハードロック風の豪快なギターリフや、フリージャズにも通じるポリリズムで緩急をもたらすドラミングなど、決して展開が一辺倒にならぬよう気を配っている点も興味深かった。おそらく次に出演する際はより大きなステージになるだろうが、そういった意味でも彼らをFIELD OF HEAVENで見ることができた最初で最後の機会だったのかもしれない。
Photo by Ruriko Inagaki
そして16年ぶりに苗場に帰還したマッシヴ・アタックのステージは、現地にいた観客はもちろん、おそらく全世界の人々が配信を通じて目撃したことだろう。そう、今回彼らにとって初のライブ中継が実施されたのだ。SNSやAIがもたらす不確かな情報の数々が大型ビジョンに羅列され、マッシヴのカラーにアレンジされたジジ・ダゴスティーノ“In My Mind”のカバーからライブはスタートした。不穏なムードを纏った“Black Milk”や“Teardrop”などではエリザベス・フレイザーが神秘的な歌声を披露するなど、パフォーマンス面でも見るべきポイントが数多くあった。

Photo by Taio Konishi
先に触れた“In My Mind”然り、マッシヴ・アタックは表現したいメッセージ、伝えたい主張を優先させるため自らの曲だけでなく他アーティストの楽曲も積極的にカバーしている。今回ではティム・バックリィ“Song To The Siren”、アヴィーチー”Levels”などがセトリに組み込まれているが、それぞれがどのような意図で選曲されたかは定かではない。だが選ばれている以上、そこには意味が必ずあるのは確かだ。そうした意味やメッセージを観客やリスナーに考えさせることこそが、マッシヴ・アタックの狙いなのかもしれない。

Photo by 宇宙大使☆スター