宇野友恵さんのバースデーライブや公式ファンクラブ〈Cafe RYUTist〉のオープニングパーティーを終え、一息ついたかと思えば、2022年6月19日(日)に東京でひさびさにワンマンライブを開催すると発表したRYUTist。4人は、新たな舞台に向けて走り出しました。そんなRYUTistの友恵さんがときめいた本を紹介しているこの連載。第12回は、伊坂幸太郎さんの連作短編集で映画化も話題になった「アイネクライネナハトムジーク」について。温かい物語や音楽との関係性に感じ入りながらも、友恵さんにとってこの本は◯◯◯◯◯◯◯なのだとか……? *Mikiki編集部

★連載〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉の記事一覧はこちら


 

ゴールデンウィーク最終日。
5:30起床。最近ハマっているヨガで身体を目覚めさせ、クロワッサンのブレックファーストを済まし、ドリップしたコーヒーを持って自室へ。
明るい陽が差し込む部屋で、心地よい生活音をBGMに、優雅な読書タイム。
窓の向こうでは青々とした木々が爽やかな朝を演出してくれます。
本の世界に浸り、物語の結末に涙する……。至福のひとときを過ごしていました。

読んでいたのは伊坂幸太郎さん。間違いない、ハズレなしという絶対的な信頼があり、多くの方から愛される作家さんの一人。私ももちろん、大好きです。
締め切りが迫っていても、しっかり本を楽しみ、余裕を感じる大人の朝でした。

ということで、〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉第12回目は、伊坂幸太郎さんの作品「アイネクライネナハトムジーク」をご紹介します。

伊坂幸太郎 『アイネクライネナハトムジーク』 幻冬舎 (2017)

 

〈僕らの世界は、出会いと音楽であふれてる。〉と書かれた帯に惹かれて手にとった全6章の連作短編集です。

私は伊坂幸太郎さんの「殺し屋」シリーズが好きなのですが、今回は物騒な事件はひとつも起こらないし、そういった類の怖い人も出てきませんでした。

「アイネクライネナハトムジーク」では、〈出会い〉をテーマに、​​​​時空を超えて登場人物たちのあらゆる関係がつながっていきます。

どんな人も人から学んで、人に影響されながら生き、​​良くも悪くもその人の経験で人間が作られていくのだなと感じました。

昨年生まれた甥が、親や周りを真似して歩けるようになったり、おもちゃの使い方を覚えたり、〈いただきます〉と〈ごちそうさま〉ができるようになったりと成長していく姿がまさにそれでした。

 

疑問だったのは、作品のタイトル、〈アイネクライネナハトムジーク〉です。

なぜモーツァルトのこの曲にしたのだろうと不思議でしたが、実際は、斉藤和義さんが伊坂幸太郎さんに作詞を依頼し、昔から斉藤さんのファンだという伊坂さんが〈小説なら……〉とお答えしてできた作品がこの物語の第一章「アイネクライネ」だったそうです。

そして、これを受けて斉藤さんが制作されたのが“ベリー ベリー ストロング 〜アイネクライネ〜”。小説を読んだ後で噛み締めるように聴きました。

まさに斉藤和義さんと伊坂幸太郎さんの出会いの作品だったのですね。

斉藤和義の2007年作『紅盤』収録曲“ベリー ベリー ストロング 〜アイネクライネ〜”

ちなみに第二章「ライトヘビー」は、“ベリー ベリー ストロング 〜アイネクライネ〜”がシングルカットされた際、​​​​​​初回限定盤の特典として伊坂さんが書き下ろしたもので、こちらでは、1回100円でお客さんの心情に合う曲の一部をパソコンで流してくれる〈斉藤さん〉が登場します。

実写化された映画では、斉藤さんが新たに書き下ろした“小さな夜”が流れています。
“アイネ・クライネ・ナハトムジーク”は“小夜曲”。ドイツ語で、〈ある、小さな、夜の曲〉という意味です。

斉藤和義の2020年作『202020』収録曲“小さな夜”

 

〈ハンカチ落としましたよ〉ではじまるような劇的な出会いではなくても、後になって、〈良い出会いだったなぁ〉と思うのが一番幸せなことだと、この作品の中で登場人物が語っています。そんな共に過ごした日々の積み重ねが彼らの絆を強くしていきました。

最初の出会いは偶然かもしれないけど、そこからどうするかは運任せではなく、自分の力で掴んで必然に変えていくしかない。
これは仕事でも同じではないかと、教えをいただいた気分でした。